落ちついた熟年ご夫婦のガーデンリフォームです。
こちらのお庭は、左側から覆いかぶさるように雑木林があり、正面は眺望が開けているといううらやましい限りの立地です。私ならハーブと野菜と果樹を育てながら、夕食は庭でトーチを焚いて・・・。そして週末はバーベキュー、満腹になったら木陰で昼寝をするという食欲メインの悦楽ガーデンをイメージするのですが、ご夫婦はそういった感じの提案にはあまりのってきませんでした。そういう感じはとうに満喫してきて、今はもっと落ちついた静かな生活を送られているようです。充実した現在の生活の中で“雑草取りが大変”、“元気のなくなった芝生をやめて石や砂利の庭にしたい”という2点で相談にいらっしゃいました。
洋風ではなく、でもあまりサビた感じの和でもなく、庭で過ごすことよりも、ガーデニングは楽しみつつ手のかからない庭、そんなご要望でした。
既存の庭石を据え直し、乱張り・砂利・畑というふうに区分けして、少しだけ図形っぽい線を入れることでモダン和風的な活力を与えました。この、場に活力を与えるために円や直線や角度を見せる手法は、600年前につくられた庭でも現代のランドスケープデザインでも使われていることで、何らかのインスピレーションを生み出す効果があるのです。でもここで意識すべきは図形を手段として使うということです。ともすると図形が主になって・・・おっといけない、また悪い癖で延々と理屈が続いてしまいそうなので、年末で忙しいし今日は止めときましょう。
〈かおり〉そうそう、早いこと設計やってちょうだい!仕事がたまりまくってまっせ~!!
落ちついた熟年ご夫婦のガーデンリフォーム、ビフォー・アフターです。
Before
After
Before
After
写真ではわかりづらいのですが、芝生はかなり弱っていました。原因は水はけの悪さです。横浜の海側はどこもかしこも粘土質で水はけが悪く、芝を張って数年経ったら元気がなくなったり消えてしまうということによく出くわします。張った直後と翌年くらいは芝に付いていた土の養分と生産時の勢いでよく育ちますが、3年目には元気がなくなって、エアレーションや施肥でもなかなか回復しません。これを防ぐためには張る前に芝生用の土壌改良が必要です。そのやり方はカテゴリ/現場ツイストの8月31日と9月1日『芝生の張り方』をご覧下さい。これから庭に芝生をと考えている人はぜひ。
で、ビフォー・アフターですが、これで芝生の雑草取りからは解放です。それとご覧のように植栽スペースが明確になることでガーデニングへの意欲は増します。さっそく奥様がビオラや今まで鉢で育てていた植物を植えていました。
山中邸の石材です。既存の庭石と白みかげ石のピンコロと乱張り、そして砂利は伊勢砂利を使用しました。
乱張り材を何にするかで迷いました。和風だからといって鉄平石では暗くなるし、丹波石や根府川石では落ちつき過ぎるし、ジュラストーンは問題外だし・・・。いろいろとうちの店に置いてあるサンプルを見比べた結果、ブラジル産天然石のグリーンに決定。少ないサンプルと写真での選択だったので一抹の不安がありましたが、出来上がってみたら色のばらつきも良好で、イメージしていた以上の仕上り感にホッとしました。
今回のように和だからといって国産の石に限定せずに探すと、思いがけずGoodな仕上りを得られます。選択を誤ると悲惨ですけど。一昔前は選択肢が少なくて、こんな選び方は出来ませんでした。それどころか、まず入手可能な石を探すことから設計が始まっていたのです。これも輸入業者各位の努力と不景気による石材値崩れの賜物、世界中の石が比較的安価に手に入る今の状況に感謝です。
ご覧のように雑木林と眺望を同時に感じられる立地で、しかも正面の下の方は遊水池になっていて家は建たないとのこと。うらやましい限りです。なかなかありませんよ、こういう場所。奥さまに「湯河原温泉みたいですね」と言うと「ほんとに、別荘地で暮らしてるみたいなんですよ」とのお返事。同じ暮らすならこういう場所でと誰もが思うのでは・・・。ほんとうらやましい。
目線の高さで横に走る電線が気になると言えば気になりますが、手前に株立ちの木を植えれば解消されます。