庭のつれづれ 『しゃがむと広がる』
立って見下ろすのとしゃがんで見つめるのを比べると、しゃがんだ方が何倍も広く感じる不思議。きっと「しゃがむ」は「振り向く」に似て、来し方にある世界が広がるのでしょう。

面白いもんですよね、走るよりも歩く方が広がるし、眺めるよりも近づいて触れる方が広がる。

広さとは面積ではなく感覚なのだと、そして思考の中にいくらでも拡大できるのだと、というようなことをつらつらと。

今設計している庭が、面積的には庭と呼べそうもないほど狭いので、そこに小宇宙的庭空間を創造しようとあれこれ想像し、あの手この手で組み立て作業中。

実際のところ椅子をひとつかふたつ置ければそれでよし、それで庭は成立するのです。あとはその外側にある広大な宇宙をどうやって取り込むか。ノスタルジー、ファンタジー、インスピレーション、イマジネーション。椅子に腰掛け夜空を見上げる人の内面を開拓してゆけば、遠くの空から汽笛が聞こえ、やがて目の前に銀河鉄道がやってくる。

庭を思い描きながら、なんだか小説家か音楽家みたいな作業になってきました。