とんでも八分 never happen
出がけに鬼女房が「気分転換に旅行でも行ってきたら。設計するには自分の調子を上げなきゃしょうがないんだから、毎日同じことやってないで、どっか遊びに行ったらいいと思うんだけど」と、珍しくぼくを労うかのように、取りようによっては取れなくもないようなこそばゆいことを言うもんですから、嬉しいような恐ろしいような複雑な気持ちになりまして、そうかあ、旅行かあ、旅行ねえ、どこ行きたいかなあとしばし思案し出た結論は、そうだ、散歩に行こう。仕事はたまってるし、しかもどれもこれもやり甲斐のある楽しみなものばかりだし、今年も実質あと1ヶ月半だし、などと思えば旅行なんてとんでも八分歩いて十分、せいぜい里山散歩が関の山。というわけで歩き出して十分で出会ったコスモスの、なんとまあ美しいこと美しいこと。




ピントを合わせながら「こんなのって、パリに行ったって、バリに行ったって、そうそう出会えるもんじゃないよ」と独り言ち、ああ、素晴らしきかなアマテラスからの贈り物に感謝感激雨あられ。脳内スッキリ片付いて、心の窓から新鮮な光と風が入ってきて、出勤前のほんのひと時で気分転換を完了したのでありましたとさ、めでたしめでたし。
知らない横丁の角を曲がれば、もうそれは旅です。
永六輔