Garden Re- Quest ときめく庭
家を建てて数年が過ぎ、最初から外構も庭も、門扉・表札・ポスト・インターホン、通路や物干場や植え込みなど、一般的に必要と思われる構成ができ上がっていいます。ええっと、植物の整備をすればいいのかな?くらいに思いつつピンポンを押しました。



音楽家のご夫婦は、ヨーロッパの暮らしが長かったこともあって、日本的に(和風ではなく)まとめられている家の周囲に、「もっとどうにかできるのではないか」という気持ちが膨らんできたと言います。そしてぼくを探し当ててご連絡をいただきました。
現地に伺いさっと外を眺めてから、促されるまま室内に。そこはグランドピアノとチェロがそれぞれ数台並ぶ、広大なリビングなのかスタジオなのか、ぼくの日常では見たことのない空間です。
ヨーロッパのアンティークであろう心地の良い椅子に腰掛け、紅茶をいただき、庭の話に入る前に話題はフェルメールとその時代背景、バッハとピアノとチェンバロのこと、弾厚作のゴーストライターは山本直純説など、まあ楽しい楽しい。時を忘れて盛り上がりまして、「ごちそうさまでした」と挨拶をして帰宅の途に。
車中で、さてと、ところでご要望は何だっけ?
これ、よくあることなんです。肝心な話を何もしていない。でも大丈夫、おふたりはときめきがある外構と庭にリフォームしたいのだと解釈しました。具体的にどうこうじゃなくて、暮らしの場を、気分が上がる仕立てに変身させたいのだと。
アーティストならではのその欲求は理解できます。ぼくも似たようなところがあって、日々自分の心のコンディションが勝負の、精神的アスリートのような職業ですから。大谷翔平やオリンピアンがトレーニングを怠らないように、日常的に想像と創造を繰り返していないと自分が機能しなくなってしまいます。



















































Hampstead とは、ロンドン北西部にある一地区の地名で、カムデン特別区(大英博物館・英国図書館・ロンドン大学などがある)に属する。詩人、音楽家など歴史的著名人が暮らした家や、ビクトリア朝時代の邸宅が並ぶ高級住宅街だそうです。
このように、住人の苗字ではなく、家にニックネームをつけてそれを表札とするのがイギリス流。イングリッシュガーデンブームの頃に「イギリス人は家を人格を持たせ家族だと位置付けて名前をつけるんだ」ということを、話には聞いていたものの初めて目にしたました。












庭が完成し、ご夫婦から夕食にお呼ばれしました。もちろん庭でのバーベキューです。







その後も何度か店に遊びにきてくださって、ほとんどお任せで打ち合わせをしないまま完成した庭に、とても満足していただいているご様子でした。嬉しい限りです。