はあ、ようやく来ることができました。ご近所さん教えてもらって、こちらに来れば庭のことをあれこれ教えてくれるって聞いたもんだから。先月来ようとしたら転んで顔やら腕やら傷だらけになっちゃって、たんこぶはできるしで、見た目が悲惨すぎるから外出せずに大人しくしていたんですよ。
そのお爺さんは杖を突いて、でもシャンとして店に入ってこられました。年齢は80代後半でしょうか。良い仕立ての洋服をとてもカッコよく着こなしています。
ご来店ありがとうございます。ご近所ですか?
磯子区です。車で来ました。家族には免許を返上しろって言われているんだけど、お役所からは最高齢運転者だってんで表彰されてます。こないだ無事更新が済んだし、まだまだ乗れます。
いやほんとに、安全運転してくださいね。で、庭のことですか?
はいはい、そうなんですよ。
そこから始まったのは、相談と言うよりは、庭があることでいかに来し方の日々が楽しかったかという庭談義。あれれ、話の内容が楽しくて、いちいちぼく好みにできすぎている。もしかして・・・
孫にホームページの開き方を教わって、あなたのブログも。で、一度お会いしたかったんですよ。庭ってのは本当に素晴らしいものです。あなたの庭観に共感しました。
アッチャー、それはそれはありがとうございます。照れます。
庭は植物のためではなく、人が幸せに暮らすための場所。おっしゃる通り。
これからもお元気で、良い庭を作ってくださいね。
いやほんとに、身の置き場がないとはこのこと。高齢の紳士から褒めちぎられながら1時間ほど、ぼくの方が庭についての知恵をたくさん頂戴して、恐縮しきりの時間を過ごしました。
ではそろそろおいとまいたしましょう。楽しかった。
こちらこそ、ありがとうございました。気をつけて帰ってくださいね。
帰り際、紳士は驚きの一言を。
私、いくつだと思います?
80代かとお見受けしますけど。
ふふ、ふふふ、102歳になりました。なかなか死なない。まあ急ぐことでもないし、神様にお任せしています。
驚愕。呆然。あんぐり。じゃ、また遊びに来ますね!と、後ろ手に、杖を突いていない方を2度振って駐車場へと歩いて行かれました。しばし、幻じゃないよな、と自問しつつ、とても心地良い気分に浸りつつ次の設計に着手しました。