庭のフォーカルポイント・破れ鍋に綴じ蓋の庭
昨年秋に忙しさの合間を縫って、女房が庭中に冬〜春の花を植えてくれました。年が明け、穏やかな陽射しが続いたので、わが家の庭はすっかり春の雰囲気になっています。 ガーデンデザイナーの夫とその仕事を取り締まる妻の意見は、こと自宅の庭に関して食い違うのでありました。
四月になれば彼女は、五月になると庭は、輝きが最高潮に達します。
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6年前の5月末。
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早朝にカーテンを開けて花いっぱいの庭を眺めながら、女房が「何か物足りない・・・フォーカルポイントが欲しいなあ」と。ぼくはまったくそうは感じず、彼女がコーディネートした花の色合いや配置にウットリするばかりでひたすら「いいなあ〜、すっごくいい感じ」と 。
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フォーカルポイントとは視線が集中する場所や物、見せ場、風景の芯になるポイントという意味で、庭づくりでは常に押さえておきたい事柄です。
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現状に大満足しているぼくと、物足りなさを感じる女房の違いは出自にあります。彼女が生まれ育ったのは姫路の漁師町で(今は埋立てが進んですっかり工業地帯ですが)、風土としてその地域の人たちは狩猟民族的なのです。 おまけに国宝白鷺城を見上げながらの青春時代でしたから、きっと黒田官兵衛のような軍師的思考も備わったのでしょう(軍師かおり、という呼び名がふさわしいと思うことがままあります)。
片やぼくは越後の山々に囲まれたコシヒカリの田んぼの中で育ちましたから、典型的な農耕民族で、足るを知り、現状維持を重要と思い、攻めるよりも自分の内面に世界を広げてゆくという思考。なんたって郷土の武将は毘沙門天の化身、上杉謙信ですから。大河ドラマで CACKT が演りましたけど、似てるでしょどことなく、似てないですか?だめ?女房からは鼻で笑われましたが。
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現状を打開しながら道を切り拓いてゆく軍師官兵衛と、現状を味わい心の平安を目指す上杉謙信、タイプは違えどこれぞ破れ鍋に綴じ蓋で、なかなかいいい組み合わせなのではないかと。もしも女房が農耕的だったら二人でどこまでも深く沈殿してゆきそうだし、ぼくが狩猟的だったら毎日前のめりで安らぎのない暮らしになるでしょうから。
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今年は今のところこんな感じ。
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わが家だけでなく、庭に関して多くのご夫婦の意見が食い違います。打ち合わせでそういう場面に遭遇するとどうするか、「それぞれのお考えを全部お聞かせください、ぼくがちゃんとコーディネートしますので。とは言ってもほとんど奥様の意向に沿って設計しますけど」と話し、旦那様はたいがいそこで大笑いし、ジャッジメントをぼくに委ねてくださいます。そしてぼくは奥様にわからないように2ミリだけ口角を上げ5ミリうなずく。わかってんですよね、お互いに男の役割が。
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これが女房殿作のフォーカルポイント。
春よこい、早くこい。四月になれば二人目の孫(女の子)が登場するそうな。