吉田さんちのガーデンリフォームをご覧いただきます。まずは最初のプラン。
Plan A
お客さまからのご要望はご主人がネットで見つけたガーデンハウスを建てたいということ以外あまり具体的なものがなく、私自身もこの広ーい庭をどうイメージしたらよろこんでいただけるか少し迷いながらプランに取りかかりました。つまりコンセプトメイクが曖昧なままスタートしたわけです。
吉田さんちのガーデンリフォームをご覧いただきます。まずは最初のプラン。
Plan A
お客さまからのご要望はご主人がネットで見つけたガーデンハウスを建てたいということ以外あまり具体的なものがなく、私自身もこの広ーい庭をどうイメージしたらよろこんでいただけるか少し迷いながらプランに取りかかりました。つまりコンセプトメイクが曖昧なままスタートしたわけです。
Plan B
これで設計完了ではなく、この後もバーベキュー炉の位置を変更したりテラスの壁を低くしたり。当初漠然としていたお客さまの庭へのイマジネーションが、打ち合わせを繰り返すうちに具体的になってきて、シルエットが明確になって行くのをうれしく感じつつ着工となりました。
Before1
After1
Before2
After2
Before3
After3
こうして出来上がりを眺めると、手探りから始まった設計のプロセスが大事だったことを実感し、同時に、練り上げたイメージが形になり現実の空間として出現するということに、ホント今さらながらですけど興奮してしまうのです。
After4
Before5
After5
Before6
After6
どうでしょうか。広くなった感じがすると思うのですが。これは茂っていた樹木を整理したことと、それ以上にゾーニングによって『場の意味』が生まれたことのよるものです。
よく「ガーデンリフォームすると今見ている庭の倍くらい広くなった感じになりますよ」とお話しするのですが、何度やってもこのことはそう感じます。場に意味を与え、空間的な構成を施すことが持つ威力は絶大なのです。
After7
Before8
After8
Before9
After9
今回は庭が広いのと、プラン段階でイメージした各位置からの風景が面白いほどイメージ通りに出来上がったことがうれしくて、ビフォー・アフターを普段よりたくさん撮影しました。
与えられたスペースにどれだけのシーンと思いを込められるか。このことを唱えながら気合いを込めて設計に向う。ガーデンデザインっておそらくもっと軽くて柔らかい作業のようにイメージされているのではと思うのですが、実は(私には)気合いや執念を抜きにしては成立しない作業なのです。
気合いを入れて、普段は今回よりもう少し狭めな場所を、狭いからこそきちっと区切るなどして、どう広く感じさせるかを意識しながらいくつものシーンをはめ込んでいきます。ウッドデッキで日だまりを楽しんで、バーベキューはこもった感じに落ち着かせて、バラの手入れをして、野菜も見事に育てて、小さいお子さんがドロ団子作りに熱中して、洗濯物も干せて、夜になったらカーテンを開けたくなるようなライティングで、ヨガや縄跳びができるトレーニングスペースも欲しいし・・・ウ~ン・・・、てな具合です。そうすると、それぞれの場所を必要最小限の広さにしつつそれを立体的なパズルのように仕立てていく、そういう設計作業になるわけです。今まで一つの庭として認識していた場所にいくつもの『外の部屋』を生み出していく作業です。
でも今回は違っていて、広い場所をひとつのインスピレーションに支配させてみよう、そう考えました。最初にご主人が店に相談に来られた時に感じたインスピレーション。それを核にした提案です。ただ、スタート時のご要望といいますか、具体的な庭の使い方が明確ではなかったので、それは徐々に鮮明にしていくとして、でもそれがどういう形になるにしろ、『ひと色の庭』にしたいと。
そのインスピレーションがどういうものだったのかといいますと・・・、瞬間的なことを解説するのは困難なので、ご主人の印象ということで。
ご主人の年齢は私とほぼ同じで、趣味も同じ、ウインドサーフィン。娘さんがうちのと同い歳で、小学校では同級生でした。ご主人の話し振りやファッションセンスから、実直さと穏やかさと、浜で風待ちしているときのような前向きなさわやかさを感じました。「そうとうウインドやってるな」ということがわかります。
話それますけど、ウインドは風が吹かないと手も足も出ないスポーツです。「吹いたらスタートだ!」という気合いを維持しつつも自然相手なのでジタバタしてもしょうがないことはわかっていますから、ポカポカした日差しと穏やかに永遠に打ち寄せる波、その世界にたたずむだけです。リラックスすること以外何も無い時間なのです。ただただ風待ち、その時間が人をウインドサーファーにするのだというのが私の持論で、時には日暮れまで待っても無風の日もあるわけで、でも帰り道は満ち足りた気分です。なかなか思惑通りのコンディションを用意してくれない自然にみじんもイライラしたり失望したりしないのは、それが圧倒的に大きいからでしょう。その大きい自然の波動にひたることだけで自分の中のいろんなことが整ってくるのです。
ご主人からそういう『ウインドサーファー』を感じて、さらにそのご主人が一生懸命に家族を守り、リードしていこうとしていることを感じて・・・何かがピタッときたんです。
今回の依頼は、若夫婦がおじいちゃんおばあちゃんと同居するために購入した家の庭が、何となく暗くて荒れていて、特に一階に住むことになるご両親に取って快適な庭にしてあげたいというものでした。私としてはご主人のそういう思いを受けて、自分と妻の両親のこと、自分たちの親への心配や願いや、いろんなことが気持の中に押し寄せてきまして、同時に親のことを考えて庭を何とかしたいと考えているご主人をうらやましく思いました。「必ずご両親が楽しんでくれる庭にするぞ!」と決意し、あえてご主人がかもし出すイイ感じに彩られた庭にしようと。ご両親と奥様とお嬢ちゃんとワンちゃん2匹の楽しい新生活がスタートできる庭、その家族の中心に『ウインドサーファー』がいる。あぁやっとたどり着きました。そういう庭にしたいと考えたわけです。毎度のことながら話がくどくてすいませんです。
明日はガーデンハウスの解説です。
現物を見てひと安心。けっこう頑丈で細部の仕上げもきれいでした。ただし、塗装はうちのオリジナルです。メーカーは「組み立て終わってから、水性塗料でみなさん1日で仕上げています。簡単ですよ」という説明でしたが、どう考えてもそれでは耐久性が悪いと思いまして、組み立てる前に部材の裏表全部をキシラデコールとオスモカラーで仕上げました。ひと手間よけいにかかりましたけど、これで安心感は倍増です。
ハウス内部にはウインドの道具に合わせて棚を付け、照明も入れ、それと夏に熱がこもらないように、天井近くの壁に通気孔を開けておきました。
撮影し忘れて内部の写真はありませんけど、中もカッコイイです。クルマ好きの人のガレージと同じで、大人のおもちゃ箱ですね。
私はウインドの道具を材木座海岸のショップに預けていて、妻にグジグジ文句いわれながら艇庫料金を支払っているという事情もあって、このハウスがうらやましくて仕方ありません。「いつかわたしも・・・」またひとつ欲しいものが増えてしまいました。
いつもはパーゴラや樹木でこもった感じに仕上げることが多いのですが、今回は違います。開放的です。
テラスに使用しているレンガはもともとこの庭で通路に使っていたものを取り置いて、掃除して再利用しました。やや苔が残っていますけど、かえってそれが庭に落ち着いた感じを出してくれました。
中央には、すっかりおなじみになって、職人さんからも「ちょっとワンパターンなんじゃないの?」と言われはじめた囲炉裡。イイものはイイんだからイイんです!
イスはジャービスのオファルチェア(チーク)をオスモカラーでアンティーク調のホワイトに塗装しました。
そして囲炉裡と同じヤキスギレンガと、まくら木(ケンパス)でつくった船舶ライト付きの立水栓。この光が夜のバーベキューコーナーの地明かりになります。
蛇口は奥様が、宝泉の『こがら』を選ばれました。
てなわけで、横浜にまたひとつ『家族の囲炉裡』が完成。さっそく楽しんでいただいたようで、炭がきれいに燃え尽きていました。
当初の設計ではこのテラスの中央に囲炉裡を設けて、いつもご両親のもとに家族が集まるというシーンを提案しましたが、打ち合わせを進めるうちに、もう少し静かな場所にしたいというイメージを持たれたのでしょう。囲炉裡はガーデンハウスの横に移動となりました。若夫婦やお子さん主催のバーベキューパーティーを考えるとそれが正解だった気がします。
部屋から段差なしで出られて、そこから庭へは緩やかなスロープで移動できるという仕立てです。
ここに置くイス・テーブルはご両親が後で探すということで(これも庭の楽しみです)まだガランとしていて、とりあえずバーベキューコーナーのベンチを置いてあります。
おじいちゃんが少しだけ足が弱っているとのことで(おばあちゃんは元気いっぱい!やはり女性の方が強い。我が家も同じです。)、できるだけ外に出て庭のある生活を楽しんでもらいたいというご主人の思いを受けての提案でした。
庭に芝生を提案する場合、まず最初にご説明しなければならないことは「手入れが大変です」ということ。実際「芝生の手入れに疲れたので」というのがガーデンリフォームを考えるきっかけになることが多くて、店でお受けする相談の半分近くはそれなんです。
手入れが大変だといいながら、けっこう芝生の庭を提案し、施工もしていて、今回もそうです。
その理由は「芝生の庭は人を健康にする」ということ。これは庭に関わってきた実感として、芝生の手入れをしながら暮らしている人は元気で、しかもイイ感じの人が多い。多いというよりほぼ100%そうなんです。ですから大変さはご説明した上で提案には躊躇せずに取り入れています。
今回もそうで、おばあちゃんが楽しみながら手入れしてくれそうでしたので設計に組み込みました。ご一家が元気で、イイ感じで暮らしていってほしいという願いも込めて。
芝生をきれいに育てる絶対条件は日当たりと水はけです。日当たりは分かりやすいのですが、水はけがどういう状態かというのはなかなか判断がつかないかもしれません。まあ、芝生を張るには下地づくりが必要で、その目的は『水はけを良くする』ことである、そう憶えておけばいいでしょう。
我が家ではあちこちのお客さまからいただく『庭産野菜』で食費がかなり助かっています。まあ食費のことよりも、そのうまさ。形や大きさはまちまちで、虫食いだらけの頂き物があまりに美味しくて、スーパーに並んでいる企画品を見ただけで「味気ないなあ」と思ってしまうようになりました。それと土が口に入ることにあまり抵抗がなくなって、水洗いもてきとう。一生懸命ごしごし洗うともったいないような気がして。
庭の野菜で自給自足は無理だとしても、時々収穫して家族で盛り上がりながらそれを食べる。最高に豊かな光景ですよねえ。それとお孫さんたちに本当の野菜の味を教えることができます。野菜の本当の味、そして新鮮さ。野菜は刺身と同じくらい鮮度が大事だってこと、スーパーの野菜で暮らしているとすっかり忘れてしまうものなのです。
庭でプチ農家をやるもう一つの魅力は『土づくり』です。台所で出た生ゴミがいい堆肥になって、疲れた土を元気にし、滋養たっぷりの野菜になる。それを臭覚や触覚や味覚で実感しながらの生活、ロハス&スローライフですね。
さらにもう一つ。野菜は時間がかかるということ。数カ月をかけてようやく食卓にのぼるのですから、それを育てる生活は「慌てず騒がず手を抜かず」という『昭和な感じ』を思い出させてくれるのです
テラスからバーベキューコーナーまで、40センチの高低差を緩やかにおりるスロープでつないであります。
このスロープはやや足が弱ってきたお父様を気づかったご主人からの要望でした。
庭や外構で「将来車椅子になっても大丈夫なように」ということでスロープにしたいというお話が年に何度かあります。「老後の車いすの心配までしている人はまず車椅子生活にはなりませんよ」と答えるのですが、それでも、という場合にはスロープの設計をします。でもこれがなかなか厄介で、一般的にイメージしているより緩やかでないといけません。5%(1メートルで5センチの坂道)くらい。勾配が10%以上になったら、老老介護の場合はとてもじゃないけど車椅子を押して上がれませんし、下りはさらに大変で危険でもあります。ということはつまり、長いアプローチが必要になるわけです。例えば宅盤が道路から50センチ上がっている場合は、玄関ポーチが宅盤から30センチ上がっていれば計80センチの高低差。5%だと16メートルのアプローチが必要になります。・・・たいがいは無理ですよね。前庭がある場合は庭を通って玄関ポーチに至る坂道にしたり、日光のいろは坂みたいにしたり、いろいろと工夫していますけど、無理な時は無理ですと説明します。危険なアプローチをつくるわけにはいきませんから。
でも今回は庭が広かったので問題無しでした。
ついでに、スロープの外側にある木製パネルの説明を。
これは目隠しではありません。植物を絡めてもいいですけど、それが目的でもありません。ご両親が過ごす和室から外を見たときにお隣の間知ブロックがドドーンを迫って来るので、それを緩和させるために設置しました。
庭全体を考えたときにもここにパネルがあることで空間構成がしっかりします。数日前の庭の全景写真をご覧いただくと、その効果を感じていただけると思います。
夜になると情感たっぷりの空間になります。
四季折々、この柔らかくて暖かい光が夜の庭を演出してくれます。
植物の解説が少ないというご指摘をいただいたことがあります。やりたいんです。やりたいんですけどこれ以上分野を広げると本業をやる時間がなくなってしまうので、グッと我慢しているのです。
庭木などの植物に関するご質問、いつでもウェルカムですので、電話でもメールでも、このブログのコメントでもOK! もちろんご来店いただければ一番うれしいです。特に質問や用事がなくても気軽にフラッと遊びに来てください。ぜひぜひ。
それは、ご主人の趣味(私も)であるウインドサーフィンのことです。
ウインドはとにかく楽しくて、「これ以上楽しいことって世の中にないかもしれないなあ」と過去何度か思いました。セイルアップしてプレーニング(ハイドロプレーニング現象って自動車教習所で習いますよね。要するにボードが水面をスリップしてスイスイ進める状態です)できるようになるまでの『根性物語』的な苦労や、風が吹かないと何もできないもどかしさもあって、体験スクールだけでやめてしまう人も多いのですが、その段階を超えた時にはもうウインドのとりこ。仕事中でもイイ風が吹くとワクワクするようになります。そしてNHKの天気予報で週末の気圧配置をチェックすることが習慣になって、クルマを運転していても街路樹の揺れ方や雲の流れが気になり、常に風の向きと強さを察知しては頭の中でフォームのイメージトレーニングをする、そういう日常になるのです。
ウインドに夢中になると必ずぶち当たるのが、風待ち。私は風待ちも楽しい派なのでいいんですけど、多くのウインドサーファーはそうではありません。で、週末だけ海にいってもなかなかいい風に当たらなくて欲求がつのって、平日に会社を休んで乗りにいったり昼間に吹けばいつでも行けるように夜の仕事に転職したりという話はしょっちゅう。なるほど、と唸ったのはビルのガラス拭きでした。ゴンドラに乗って高層ビルで揺られているあれです。ちゃんと昼間の仕事でかなり給料はいいし、風が吹くと仕事は休みになるのです。ウインドしたい時に仕事が休みですからウインドサーファーには理想的な職業というわけです。
そんな感じで風という自然の魔力のような魅力に翻弄されるウインドですから、どうしても社会生活からドロップアウトしてしまう人が多くて。気持はわかるんですけどねえ。
でもその点こちらのご主人は違っていて、食品関係の会社にお勤めの優秀な仕事人です。そして良き父であり夫であり、たのもしい一家の大黒柱です。そういう『立派な社会人』がウインドを楽しんでいるということがうれしくて、同時にほっとしたのです。神様から「ウインドやってても大丈夫なんだ」という免罪符を頂戴したようで。
私は実のところ、最近ほとんどウインドしに行っていません。その気になって気合一発入れて材木座海岸に向かえば、半日で十分楽しんでこられるんですけで、日々忙しいばかりでついつい足が遠ざかっています。行こうと思えばいつでも、例えば今日でも行けるのに、設計がたまっていてお客さまを待たせた状態で、自分が日常から脱出することは後ろめたいのです。ウインドに行けば確実に楽しい時間を満喫できるということがわかっているだけに、なおさらなのです。ワーカホリックですね。
ほんとはわかっているんです。週一でウインドするくらいの方がコンディションが整って仕事もはかどるということ。
場所は横浜市港南区、湘南まで横浜横須賀道路で20分の距離です。私の艇庫は近間の材木座海岸で、ご主人は逗子や三浦まで足を伸ばして楽しんでいるそうです。
この距離感がいいんです。昨日ちょっと触れた『ドロップアウト』。もろ湘南に住んでいるとドロップアウトしている人が普通にたくさんいて、その状態に疑問を持たなくなってしまいます。その『湘南ドロップアウト組』には植木や建築関係の職人になって食べている人も多くて、人柄はいいんだけどもうひとつ責任感に欠けるというタイプの人たち。人生の中心に仕事や家族ではなくて海があるという、一面カッコイイけど・・・。同業者間でも「サーファー(サーフィンやウインドサーフィンに夢中な人)に仕事頼んだらはだめだよ」という評価があるくらいですから。
といいつつ、うちの職人さんにもサーファーがいます。田村庭苑の田村さん。この人は違います。超一流の庭師で、いつも見事な仕上がりを提供してくれていますのでご安心を。
理想的なウインド生活の実現を感じさせられたこの庭のはじっこにカタツムリの置物があって、それが私には妙にご主人のイメージとラップして、パシャッと撮影しました。
かたつむりみたいに、ゆっくりと着実に理想の家族、理想のウインド生活、理想の庭を生み出していく感じ、見習いたいところです。人生は重き荷を背負いて行くが如し・・・、ですね。