奥様はいろいろな植物を植えて楽しんでいました。ご主人は釣ってきた魚を庭で干物にしました。家族みんなで、友人も招いてバーベキューを楽しみました。
お子さんも大きくなって今年海外へ留学することになり、ふと気づくとファニチャーは朽ちて、雑草が手に負えない状態になっていました。さっ、ガーデンリフォームを始めましょ。
リフォームのポイントは次のとおりです。
1.過ごす場所を明確にする。
2.植栽スペースを少なくして雑草取りを楽にする。
3.立体構成で居心地を良くする。
Plan A
Plan B
Plan A・B をご検討いただいた結果、「 B をベースに“和”の感じを」ということで次のPlan C ができあがりました。
Plan C
明日はビフォー・アフターです。
Before
After
Before
After
再度庭を楽しむためのベースとなる最低限の施工とし、一部の樹木や木製パネル、植栽スペースの延べ段やまくら木ベンチなどは今回は見送りました。庭を楽しみながらゆっくりと要素を充実させていくという方針です。
充実した家族の時間が庭をつくりあげていく様を、私も外からゆっくりと眺めさせていただきたい。また楽しみが増えました。
小檜山邸のガーデンリフォーム。全景です。
Plan B をベースに“和”な感じに仕立てました。
何をどうすると和になるかといいますと、まずは素材。石材を鉄平石と御影石のピンコロにしました。
次に図形です。円形を無くして方形で構成しました。おもしろいもので、単純に言うと円は洋風、角は和風になります。
そして木製パネル。一般的な斜め格子だと洋風、写真のような縦横格子だと和風になります。ちなみにアルミフェンスや板張りの木工フェンスの場合。横だと洋風、縦だと和風になります。
キッパリと洋風・和風という言い方だとしっくり来ないかもしれません。和洋折衷な住宅で和洋折衷な暮らし方が一般的になっているので、そのスタンスで言えば“洋は華やかさ”、“和は落ち着き”ということになるでしょうか。図形で言うと円形は楽しさや躍動感を演出し、四角は落ち着きや情緒を生み出します。
庭の中に居場所、過ごす場所を設定する場合、平面的には3メートル×3メートルを確保すればOK、ゆったりしたイス・テーブルを置いても十分な広さです。でもそれだけでは“過ごす場所”として成立しづらいのです。足りないのは空間の厚み。平面のスペースに立体的な構成物を入れることでその場所が空間として認識されます。木陰に入る、壁にもたれる、アーチがあるとくぐりたくなる。人は立体構成された空間の中に入ることを好みます。
今回はコーナーパーゴラ(オスモ)とサイドパネルでその感じを出しました。
春になったらゴーヤとテッセンを植えて、夏にはパーゴラからゴーヤの木漏れ日が、サイドパネルには薄紫のテッセンが咲いている、そんなイメージで設計しました。
ウッドデッキは“広い縁側”のイメージで。過ごし方は卓袱台と座布団で。
実際にデッキであぐらをかいて写真を撮ってみました。庭がこんなふうに見えます。
レッドシダーの柔らかくて暖かい感触も良し、塗装もウォルナットを薄めに塗ったのが正解でした。
デッキ脇に植えた木が成長し、あちこちに花が咲いて庭が濃くなってきたら、ここがこの庭の特等席になります。
“冬来たりなば”な小檜山さん家の植物です。今は陽が傾いていて午前中ずっと日陰ですが、春になれば充分に陽が入ります。春園芸の季節が楽しみです。
家の中もいい感じの“和”でまとめている小檜山家。奥様はお茶の心得があるようで、茶花も増やしていきたいとおっしゃっていました。
ご夫婦とも忙しく働きながら、家ではゆったりと落ちついた時間を実現している様子が伝わってきて、プランを進めながら何かこちらが癒された、そんな感じが残った仕事でした。
数年してお子さんが留学を終えたら、また家族の次のページが開くのでしょう。そういう子どもの成長や変化を夫婦で淡々と受け入れながら、何がどう変わろうとも慌てず騒がず、しっかりと今日を組み立てていく静かな強さを感じました。
そうしていれば、家族のライフサイクルで、今は静かな“夫婦の庭”がにぎやかな“家族の庭”になることでしょう。はたしてこの先どんなうれしいストーリーが用意されているのか、5年後、10年後のこの庭を覗き見てみるのが楽しみです。