2人のかわいい小学生の男の子が主役、そんな岡林さん家です。奥様が当ブログ3月9日のカテゴリ/新築住宅の庭『キッズガーデン“砂場のある庭”』を読んで下さって、「砂場が庭のまん中にある庭を」ということで打合わせがスタート。他にウッドデッキと目隠しと立水栓と落葉樹と・・・。そんな要素を入れた“ガーデニングの庭”と“芝生の庭”の2プランを提案しました。
PlanA
PlanB
このA・Bをごらんいただいた結果Aの方をベースに考えるということになりまして、さらに検討・調整してできあがったのが次のPlanCです。
PlanC
男の子をお持ちの若いご夫婦が放つ独特のきらめき、お父さんはいつか来る思春期を見据えながら子供達のリーダーとして生活全般に力が入り、お母さんは自分とは種類の違う男の子のパワーにとまどい、疲れぎみながらも一生懸命に子供達(リーダーも含めて)の世話を焼く。そして奥様の家事育児の疲労を気づかいつつ自分も限界いっぱいまで仕事と子育てに没頭するご主人。この感じが私には眩しく輝いて見えます。ご夫婦ともども大変な時期だと思いますけどそれもお子さんが中学生になるまでです。「がんばれ~!」。で、男の子が中学生になるとどうなるかと言いますと、蛹が羽化するように全く違う人になります。殻を自分で破って羽化するときのもがきも凄まじい。でも終わってみればかわいいものです。問題は羽化した後はたいがい親と遊んでくれなくなるということ、これが、特にお母さんにはきついようです。が、それも順調な成長過程、その時を悠然とむかえられるためにも、男の子が幼虫のうちに思う存分、飽きるまで、疲れ果てるまで遊びましょう。庭がその舞台になればいいなあ、親と一緒に庭で遊んで育った子供はどんな道に進もうとも“おもしろい”、これはこの仕事で得た実感なのです。
きらめき真っ最中の岡林さんご一家をイメージしつつ、こんなことを考えながら設計しました。
2人の男の子が主役のファミリーガーデン、ビフォー・アフターです。
Before
After
Before
After
Before
After
両隣りのお宅も同じで、引き渡しの時に庭には芝生が張ってありました。今回たまたま芝生ではないプランに決まったので全部はぎ取ってから施工したのですが、ご多分に漏れず芝の下地は水はけが悪くて最悪な状態でした。工務店さんとしては土のままではほこりも立つしとりあえず芝生でということかもしれないのですけど、せっかく張るならあとひと手間加えればそのまま何年でも芝生を楽しめるのに、少し残念です。余談ですけど。
数十棟が新しく建った分譲地で、どのお宅もまだ庭は手つかずです。これから5年10年と経つうちに各家がそれぞれの家族に合った庭をつくり、木が育って花が咲いて、イイ感じの街になっていくことでしょう。ここは、そんな予感を感じさせるしっかりした計画で出来上がっている分譲地なのです。実はこのことが非常に重要なことでして、街並計画、その出来不出来が住む人たちの人生に大きくかかわってくることなのだということを感じています。無計画に出来上がった雑然とした街並、住む人と無関係な様々な欲望や都合が絡み合った混沌とした街並、人工的で情緒のかけらも無い街並、路地裏や井戸端的な場所(コモンスペース)が無い味気ない街並、そういう場所で幸福な家庭やコミュニティーを維持するのは相当な努力がいります。というか、無理なのかもしれません。
嫌な事件が報道されるときに、その舞台となっている街並を意識して観察してみて下さい。あの事件、この事件、どれもまるでその街が起こした事件のように思えるほどどの街からもいやなオーラを感じます。こんな話をするとインチキ霊感師みたいですけど、仕事柄いろんな街とそこに暮らす人たちを見てきたからでしょうか、確かにそう感じるのです。だから、知り合いが家を探しているという時に、私も妻も必ずこのことを考えてアドバイスします(最近も2度ありました)。幸せ実現が容易な街と困難な街、新築や引っ越しをお考えの方は、一度そんなこともイメージしてみて下さい。これはほんとに大事なことなのです。
岡林邸のウッドデッキです。リビングダイニングの正面、室内からいつも見える場所に落葉樹を植えたくて、隣地との境界線いっぱいから、過ごすのに十分な広さを確保しつつ斜めにしました。そして一段降りてぬれ縁、これで庭で遊びながら腰掛けるのに丁度いい高さになるのです。
デッキから突き出ている3本の柱は夏場に日よけのシェードセイル(3角形)を取り付けるためのものです。
デッキの素材は耐久性とともに風合いを重視してレッドシダーで、塗料はキシラデコール、色は建物に合わせて明るめのカスタニを選択しました。
今のところ生け垣がまだスケスケで高さも足りません。半年もしてこれがしっかり仕立たれば極上の“家族の場所”になります。来年の夏が楽しみです。
快適な庭、家族で過ごす庭を成立させるために目隠しは欠かせません。ウッドデッキ側はしっかりめに木工フェンスで、反対側はタカショーのレベアーチトレリスで軽く仕切りました。特にトレリス側のお宅には岡林さん家のお子さんと同じくらいのお嬢ちゃんがいて、仲良しなのでスケスケがいいとのご要望でした。このように遮蔽するということともにお隣との関係性を考慮して目隠しを考えることが、庭以上に大きい“暮らす”という意味での快適さを生みます。
立水栓はわざと庭の一番奥の角に、こうすることで庭を隅々まで有効に使い、意識する導線が出来上がります。蛇口は子どもたちのリクエスト“ヘラクレスオオカブト”です。
最後にこの庭の中心、大きな砂場です。プランするときに最初に決まっていたのが「庭の真ん中に砂場をつくる」ということでした。男の子はとにかく穴を掘りたいものなのです。これはもう本能なのです。一年中、しょっちゅうこの話題になります。
男の子は歩きはじめるとすぐに石を拾って投げ、次がドロ団子で、その後砂遊びに夢中になり、それが長い子だと6年生まで続くのです。でもまあ、たいがいは2~3年で砂遊びは終わり、砂場は忘れ去られてしまいます。だからあえて庭の真ん中なのです。そうしておけば砂場の次は花壇、興味が向けば有機栽培の畑、そして究極はバーベキュー炉、家族で火を囲む“いろり”へと進化させることができるのです。子どもの成長、家族の歴史とともに庭の中心が変化していく。それが可能な庭というわけです。
以上、新しい街での暮らしをスタートさせた、幸せにきらめく岡林さんご一家のファミリーガーデンでした。