住宅外構の設計では大概の場合「いかにしてコンクリートとアルミを使わずに構成するか」という思考になります。その理由はいろいろとあるんですが、要するに「味気ないから」と言ったらいいでしょうか。
世界中の街並を眺めたときに、日本ほどコンクリートブロックとフェンスや門扉などのアルミ製品を多用している住宅地はありません。家を建てたら必ずそれらで外回りを固めなければならないという条例があるかのように、どこもかしこも、これでもかこれでもかとコンクリートとアルミを使っています。変ですよね。
東海大学助教授の葉千栄さん(中国との話題になると時々テレビでコメンテーターをされています)にMXテレビの[アジア電子台」という番組に呼んでいただいて「日本の街並と庭について」というテーマで話したときにその話題になりました。
葉さんは中国の演劇の使節団で世界中を回って、そして日本に来て思ったそうです「日本の総理大臣はコンクリートメーカーの社長に違いない。そして大臣クラスにはアルミメーカーの社長がいるはずだ。じゃなかったら、こんな街並はありえないよ。これは国の権力者によってできあがった風景なんだ」と。葉さんらしい皮肉まじりの冗談だったんですが、まあ、当たってるようなところもありますよね。かれこれ10年前のお話です。
ぼく自身、もともと疑問に感じていた部分だったこともあって、大盛り上がりして、それ以降ますます「できるだけコンクリートとアルミを使わない外構、街並づくり」に意識が向いて行きました。
今回の外構リフォームでもそうで、既存のコンクリートブロックと階段、アルミフェンスを排除するところからイメージが始まったのです。
では何を使って再構成するのか、というと、天然素材です。コンクリートとアルミのかわりに天然石とアイアンウッドを選択しました。
アイアンウッドとは南洋材と呼ばれるウリン、イペ、ジャラ、バンキライなどの硬い材木のことで、海沿いのボードウォークなどに使われていてる、日にやけて灰色になっているあれです。
それまで日本で使われてきたマツ、スギ、ヒノキに比較すると、重くて硬くて、腐食の心配がほとんどありません。
ただ、材木なのに腐らないという特性と冷たい質感に違和感があって(ぼくの頭はアイアンウッドのように硬いので)ウッドデッキやベンチなど、人が触れる構造物の場合は木の風合いを感じられる、従来のレッドシダー(スギ)などを使うようにしています。
このアイアンウッドが、ここ数年で極端に価格が下がってきたんですね。値段が下がるのはいいことのようにも思いますけど、反面嫌な予感も過ります。むちゃな森林伐採が進んでいるんじゃないか・・・。そこまで考えると身動きとれずに立ち尽くしてしまうので、今は便利に、適材適所で使っていこうと思っています。
天然木なのに腐らない、スッキリとした仕上がり感のあるアイアンウッドは建築家の方々にも大人気で、建築雑誌や住宅展示場でもよく見かけるようになりました。
腐らないとはいうものの天然の木材ですから、多少は反ったりひび割れたりします。そして色は灰色になってきます。そうなったときのアイアンウッド、それはそれでいい感じなのです。
ひび割れて灰色になることを湘南の大工さんは[銀色になる」と言っていて、それが湘南らしくていい、という価値観を持っているようです。日にやけて銀色になった渚のボードウォーク。いいなだなあ、そういうの。