基本的にとても前のめりな性格なものですから、この夏の暑さにも嬉々として日焼けし大汗かくような段取りで仕事をしてきました。灼熱に真正面から対峙するのが修行時代に身につけた仕事の流儀で、それがいちばん楽しいのです。早朝のテレビから「今日は熱中症にご注意ください」とか言われると、コンビニで塩タブレットを買わなきゃと思いつつも、内心ワックワクするんですよ。
風の歌を聴け poko a poko rit.
ポコアポコリット(徐々に遅くする)。

晩夏の主役はトンボたち。


トンボの祖先は3億年前のシダ類の森を飛び回っていたメガネウラで、
その姿は現在のトンボとほぼ同じです。
ただし大きさは30センチ以上だったそうで、
恐竜の頭上でバサバサと羽音をさせていたのでしょう。
ちなみにゴキブリもその頃から今の形で、大きさは50センチとのこと。
その頃の恐竜はまだまだ大型化していなくて、体長60センチくらい。
60センチの恐竜、50センチのゴキブリ、30センチのトンボ。
なんだかイメージしづらいけど、その風景、ワックワクしませんか。


台風が行き、ようやく気候が通常の晩夏っぽくなったようなので、ここでひとつ、意識的に前傾姿勢をすっとまっすぐに、スカイフック(空から下げられた糸を頭頂部のフックに引っ掛けて、吊るされている姿勢)に正して、仕事と暮らしのペースをポコアポコリット。


この頃お客様と庭の打ち合わせをしていて、ぼくの方が力んでいて、少し変な印象を持たれているかも、と感じることがありました。庭を熱く語っている自分が、もしかしたら暑苦しくなっていたのかもしれないと、庭の書斎で反省しきり。季節と上手に並走している賢者(お客様・ご夫婦)たちの感覚に同期して、ズレを調整しなければいけない。で、ポコアポコリットのタイミングだなあと思い至った次第です。



庭にイマジネーションを広げる人たちは、概してぼく(わが夫婦、いわふち家)よりも上質に、丁寧に暮らしています。思い起こせばかれこれ30年前から、そういう人たちの思考や生活感覚に引っ張り上げられることを繰り返して、庭を熱く語りながら生活ができる現在に至っているのです。
余談。音楽用語を使うと自分を整えやすいのです。ポコアポコリット、響きが可愛いですよね。他にはグランディオーソ(壮大に・堂々と)、ヴェローチェ(速く)、リゾルート(決然と)、レガート(なめらかに)、ドルチェ(優しく、柔らかく)、エスプレッシーヴォ(表情豊かに)、ダ・カーポ(はじめに戻る)、アダージオ(ゆるやかに)、アンダンテ(歩く速さで)、カンタービレ(歌うように、表情豊かに)、モデラート(控えめに、節度を持って、中くらいの速さで)。
設計とか考え事をするときにこれらを引っ張り出してくれば、自分が自分のマエストロ、そんなイメージに立つことができます。