「虫を擬人化するのはナンセンス」とも仰っていますけど、しかし小松先生、虫に学ぶことは多いですよ。何より夢中で蜜を吸う姿の美しさ、楽しそうな様子に、人生かくありたし、といつも思います。学術的には感情を持たないのかもしれませんけど、明らかに、羽をゆるりと震わせ全身で歓喜していことが伝わってくるのです。
風の歌を聴け La Dolce Vita
近ごろ話題のオタク系昆虫学者、小松貴氏によれば、虫はぼくらと違い感情的な感覚を持っていないそうです。外界の刺激を受け、それをDNAに照らして行動をするだけ。だから暑かろうが寒かろうが不満や不安を抱かずに、ただその時々の環境に適応して暮らしている。迷わないし、悩むこともないその思考の優位性によって、彼ら虫族は、地球上で最大級の繁栄を獲得したのでしょう。



きっと神様はそういう、ピュアというかシンプルというか、脳がコンパクトな生き物が可愛くて仕方がないのでしょう。だから酸素の供給を担う生態系の基盤である植物たちの相棒に、昆虫を据え、相思相愛(苛烈な攻防戦とも解釈できますが)の関係性が、かれこれ1億年も続いているのです。



人が花に癒される理由は、蜜を求める昆虫と似た感受性を持っているからかもしれません。虫たちの命の糧である蜜の在処を示す、色と形と香りに反応する人は、昆虫同様に神様に可愛がられて安定的な居場所を与えられ、運に恵まれた生活を送れるようになっているのだと、ふと、そんな理屈が浮かびました。



虫が嫌い!という人は多く存在します。驚いたことに、こともあろうにうちの娘がそうなので、虫嫌いを責めることはできません。しかし花嫌いの人には会ったことがないわけで、せいぜい皆様、庭の花や野に咲く花に近づいて、しゃがんで、昆虫の視線で見つめてみてください。きっと癒され昆虫脳が活性化し、神様に好かれて、運(蜜)に恵まれる La Dolce Vita 、甘い生活になってゆくでしょうから。