レンガ積みの壁－藤井邸

さあ、今日から新シリーズです。藤井さんちは当初裏庭の設計依頼でした。家を購入した時には裏手が雑木林で、それは気に入って家を建てたのだそうです。ところが何年かしたらその雑木林が造成されて間近に家が建ってしまった。そこで、条件が変わってしまった庭をリフォームしたいということでした。
現地調査にうかがって、それまでの庭とまったく考え方を変えた別世界を提案したんですけど、ぼくとしてはその裏庭よりもリビング外の前庭の方が気になって「ついでに前庭もプランさせてください」ということに。

前庭は通りに面していて、芝生と植木のオーソドックスな仕立てでした。で、よくあることなんですけど通りから丸見えで、リビングのレースのカーテンが閉まりっぱなしという生活だったのです。裏庭も大事ですけどリビングの居心地をよくしたり、リビングから出て過ごせる庭、リビングが外に広がった感じの庭を提案してみたかったんですね。「きっとよろこんでいただける」という予感がありました。
予感的中！結果的には裏庭は放ったらかしで前庭をリフォームすることになりました。

最初にご提案した２プランです。

Plan A

Plan B

Aは円形の目隠し壁とタイル張りのテラス、Bはウッドデッキで過ごす場所をつくって、どちらも通りからの視線を遮るために必要最低限の目隠しと、過ごす場所以外のスペースはガーデニングを楽しみつつ「過ごす場所」を演出する、そんな構成になっています。

この、考え方は同じで、見た目がまったく違う２プランをご覧いただいて、ご夫婦でじっくり検討していただいた結果できあがったPlan Cは明日ご覧いただきます。

今回のようにリビングが道路に面している場合、「庭で何を楽しむか」ということ以上に、必要なところに目隠しをキチッと施してカーテンを開けて暮らせるようにすること、「リビングの居心地をよくすること」が大事です。まずはそのことクリアーするためにはどこからどこまで、どの高さまで目隠しが必要かをイメージして、それができたら、次に、庭で何をして楽しむかを考えて、今度は庭に出て過ごすための目隠しやゾーニングや立体構成を考えていくという、そんな順番がいいと思います。まずは室内、そして外。
とにかく目隠しです！目隠しということに意識が行かないばっかりに、せっかくつくったウッドデッキやテラスがまったく使われることなく何年も過ぎている、そういうもったいない庭がいたるところにあるのです。

Before １

After １

Before ２

After ２

Before ３

After ３

Before ４

After ４

住宅地を歩くと最も多いタイプの、ごくごく普通の庭が「過ごす場所」になりました。中央線沿線の、例えば吉祥寺にあるオープンエアのレストランみたいでしょ。
完成後しばらくしてからご夫婦でご来店くださって「ほんとに満足してますよ」と、いつものニコニコ顔で言ってくださいました。最高にうれしい瞬間でした。

明日から各ゾーンと細部を解説していきます。

庭の内部に塀を立てるというのは、１０年前には考えたこともない手法でした。それが今では普通に感じている、というかとても重宝にしているやり方になっています。いつもはブロック塀にジョリパットという着色モルタルを使って仕上げることが多く、今回のレンガでの施工は新鮮でした。癖になりそうです。
で、このレンガ塀の目的はふたつあります。ひとつは空間構成、過ごす場所（テラス）を平面ではなく立体的に認識させるため。もうひとつはテラスと室内の居心地をよくするために、道路からの視線を遮る、ということです。
道路からはこうです。

 

そして内部なこうなりました。

 

 

いい感じでしょう！
もう一度ビフォーを観てみましょう。

それがこうなったんですから、ね、いいでしょう！

室内からの眺めです。もうカーテンは開けっ放しです。

今回とても良かったのはリビングのサッシが普通のものよりサイズが大きかったことです。カーテンだけでなくサッシも開けっ放しで暮らしたい、そういう場所になりました。

もう一点、とても有効だったのは、テラス全体を持ち上げたこと。リビングとテラスが「ひとつの場所」として解け合いました。

自画自賛は毎度のことなのでご容赦を。このガーデンリフォームで暮らしが変わったんじゃないかなあって思っています。こういう仕事をやり続けたいなあ。

今回のポイントはテラスの壁をレンガでつくったことです。使用したのはエスビック株式会社のオーストラリアレンガ「ボーラル・ブロック／オールドロングリーチ」です。
価格的にはホームセンターで売られているレンガよりも高めですけど、時間が経ったときの風合いが格段にいいのでこれにしました。庭はできあがったときがベストではなくて、時間とともによくなっていくのが理想ですから。ちょっと贅沢な選択でしたけど、正解だったと思います。

 

 

塀にはスリットが開けてあって、そこにアイアンの飾りをはめ込んであります。

 

床もいつものタイルではなくて、これもエスビックの天然石平板「アナトリア」です。

レンガ、アイアン、天然石という組み合わせで、ヨーロッパの古城のような雰囲気になりました（ちょっとオーバーですが）。

素材の選択によって場のイメージは大きく変わります。目指す空間イメージ、最初は漠然としているそのイメージを、徐々に具体的に、鮮明にしていく。素材選びはそういう作業なのです。

今回レンガにこだわったのは、素材選びのときに気をつけていることがあったからでした。それは「古美る（ふるびる）」ということ。
庭を構成する素材には２通りあって、古美るものとそうでないものです。時間が経った時に風合いを増すものが古美る素材です。石、木材、レンガ、鉄など、日に焼けて風雨にさらされて、使い込むほどにいい感じになっていきます。それに対してコンクリート製品、プラスチック（樹脂）、アルミ製品などは風合いを増すのではなくて劣化していく感じなんですね。だから極力使わないようにしています。それから、レンガであってもモノによって風合いの出方が大きく違いますから要注意です。
特に今回は、奥様がこの「古美る」という感じがとても大好きな方でしたから、いつもにも増してそこがポイントでした。

テラスの照明器具です。マリンライト２灯ＬＥＤのフロアーライト２灯といういつもの構成、おなじみの組み合わせですが、

 

今回はフロアーライトの色をブルーではなくホワイトにしました。ブラウンのレンガに当たる光としてはブルーだとモロ反対色なので荒れて見えるかもしれないと思ったんですね。

 

日が落ちるとこうなります。

 

しつこいようですけどもう一度ビフォーをご覧ください。夜はカーテンを閉めて、庭に出ることはなかったと思います。それが、

いいでしょう！夜のテラス。

生活（人生）変わりますよね。いいなあ！アァ、自画自賛が止まりません。欲しいでしょ、こういう場所。イメージしましょうよ！「イメージできたらできたも同然！」、イメージし続けていれば、「気がついたらできあがっていた」という具合に、あなたの理想の庭が目の前に出現しますよ。ほんとですって、イメージすることですよ

今日はこの庭のメインであるテラス以外の場所、テラスの左右を解説します。庭への入り口、和室の前に、目隠しとして来訪者からの目隠しとして設置したまくら木スタンドです。機能的には目隠しなんですが、感覚的には庭の入り口を強調する結界（違う世界をつなぐという意味で、神社の鳥居や、家だったら門柱がその役を果たしています）です。

まくら木スタンドとテラスのレンガ塀の間に、水場＆ガーデニングスペースを設定しました。
この場所が「テラス以外の余った場所」ではなく、存分に楽しんでいただく場所にするために、その入り口にアーチを設置しました。

アーチは便利です。これもまた結界であり、招き入れる、周辺の空間を立体的に認識させる、アーチの奥への期待感を生み出すなど、庭を構成するときに無くてはならないアイテムなのです。

アーチをくぐると現れるのがこの立水栓。蛇口をふたつにしました。その理由は、ガーデニングを楽しむ庭ではホースでの散水が日常作業なので、片方の蛇口にホースをつなぎっぱなしにするためです。もう１個は洗い物とか手を洗うのに使います。蛇口が２個、便利ですよ。

 

 

テラスを挟んで「水場＆ガーデニングゾーン」と反対側にもスペースがあります。そこは庭の一番奥なので、そのに行く理由が無いとデッドゾーンになってしまいますから、物置を置くとか、何かしらその一番奥まで行く用事をつくりたいと考えました。

あれこれイメージして、結論は花台。レンガでつくった台の上に植木鉢を置くことで、その鉢に咲く花のハナガラ摘みや水やりでそこまで行ってくれるだろうということです。

同時に、その花が通りからも見えることでその行動へのモチベーションが高くなるのでは、そんなふうに考えて組み立てた構成でした。

そして贅沢にも、そういう狙いのために、レトロな街灯まで設置。
夜見て思ったんですけど、この街灯が、辺りが暗くなってからの庭の角おさえとして機能していました。つまりこれがあることで、照明の灯りの高さまでの、庭全体の空間が認識されて、とても広くてゴージャスな雰囲気を演出していたのです。この夜の効果は狙いではなくて、結果良ければ・・・でした。

今日は樹木です。芽吹いた葉っぱが梅雨前の今頃、最も美しく輝きます。

レンガ塀の外側にあるこれらの木が、テラスを高原リゾートのような雰囲気に演出してくれています。

ようし！今日もやりましょう！今日は庭に点在する置き物を並べてみます。

まず門塀にシーサー。これは沖縄旅行のお土産でしょうか。いつも笑顔のご夫婦ですから、さぞかし楽しい旅だったのではないかと、旅先でのシーンが思い浮かぶような気がしました。

テラスのレンガ塀の上にバードフィーダー。撮影時にはリンゴが置いてあって、甘酸っぱいいい香りが庭中に広がっていました。
リビングからバードウォッチング、というわけですね。いい感じです。

そこに集まる野鳥を眺めるように白い鳩が置いてありました。

その塀の足元には忙しそうに花を運ぶ犬。

うまいなあ、ファインダーをのぞいているとそれらの小物からいそんなシナリオが浮かんできました。ドラマのワンシーンのように配置しているんですよね、きっと。

そしてこの庭には、ウサギがたくさんいます。「ウサギの国」なんですね。そこに小鳥が遊びにきて、入り口でシーサーが門番をしているという仕立てなのでしょう。

 

 

 

 

 

楽しんでるなあ！

イマジネーション豊かに庭を楽しむという、そういう暮らしぶりが伝わって来て、いやあ、いい刺激をいただきました。イマジネーション、大事です。

今日はいきなり、難解な話から入りたいと思います。「波動」。世の中のあらゆる物質が発しているその物質固有の振動を「波動」と呼びます。目に見えないし、科学的にどうなのかぼくにはわかりませんが、生活していく上での便利な道具として「波動」の概念を携えておくと、毎日がひとつ楽しくなりますよ。
あらゆるもの、例えば水です。水道水、池の水、山のわき水、コンビニのミネラルウォーター、それぞれまったく違う波動を発しています。何となくわかりますよね、何となくでいいんです。何となくでも違うということを認識し、気にしていると、波動の受信機がどんどん性能を増していくんです。
人も波動を出しています。気が合う合わない、好き嫌い、相性がいい悪いなど、初対面で相手がどういう人か深く知る前から、自分の中でジャッジしているのは、波動の周波数が合うか合わないか、そういうことなんですね。だんだん見えて来たでしょ「波動」。

「波動」は磁石のように引き合ったり反発したりします。周波数が近いと引き合って、同調しようとします。逆に、周波の曲線がクロスを繰り返すような噛み合ない波動同士は離れようとします。ここなんですよ大事なのは。いいですかあ、いきますよお。
自分と似ていて自分より良質の波動を感じたら、引き合うんですから素直に同調していけばいいんです。すると自分の波長が、その良質な波長に引っ張られて重なっていきます。そしてきちっと波形が重なった瞬間に、波動同士が音叉が響くように共鳴を始めます。これが感動するということ。つまりこれが「いい出会い」ということです。
逆に、噛み合ない波動の人とは反発するんですから、素直に離れればいい。これをしないと不協和音の中で延々もがき苦しむような人間関係になります。誰でも心当たりがあることですよね、そういう関係。引き合う、反発する、この作用に素直になることがコツなんです。
「えっ、じゃあ素直に亭主と別れた方がいいのかしら」なんて思ったでしょう。夫婦は別、家族の中で血縁が無い、生まれも育ちも違う連れ合いで、しかも家族の核になるべきふたりですから、そこで踏ん張って、知恵を使って、けんか上手になって、延々噛み合ない波形を合わせていくこと、それが夫婦道ですよ。修行だと思ってがんばりましょうね。修練、鍛錬の末に夫婦は夫婦になるのです。・・・。がんばるぞー！。
おっと、話しがそれてしまいました。なぜ今日「波動」から入ったかといいますと、藤井さんちの庭を撮影しながら奥様の心地よい波動を感じたからなんです。庭に奥様の波動が満ちていて、そのことをお伝えするために、皆様に前振りが必要だと思いそうしました。いきなり「心地よい波動を感じました」と言っても何のことやらわからないのではないかと。

ではその奥様の波動を増幅して共鳴を起こしている鉢植えや小物をご覧ください。

いい感じでしょう！

寄せ植えのテクニックの問題ではないんですよこれは。

だから真似できません。

感性、

 

趣味、

 

やっぱり波動です。

 

抜群にいい感じの藤井さんご夫婦です。庭と奥様の波動が同調して、共鳴して、庭も抜群にいい感じになっていました。

そうそう、「波動」についてもひとつ。自分が出す波動は外で同調や共鳴を起こして自分に返って来ます。これが「鏡の法則」。帆帆子さんもいうように、自分がイライラしているとイライラした人がよってくるし、自分がワクワクしているとときめくようなことが次々起こります。小さなことにイライラしないで、気持ちよく、明るく、プラス思考で、そういう波動に自分をコントロールできれば、簡単にそういういち日になりますよ。

てなわけで、今日は長くなってしまったので「帆帆さんの世界」はまた明日。

テラスの端にオリーブの鉢植えがありました。オリーブはこのくらいの大きさのころがいちばん扱い辛い、枝が好き勝手に四方八方に暴れるからです。だからなかなかこういうふうに仕立てるのは困難。普段、オリーブを植えたいというお客様には背丈以上に成長して樹形が安定した木を植えるように薦めています。
ですからこの鉢植えを見つけた時に「さすが！」と、感心しました。センスと知識と辛抱強さがなければこうはなりません。

よく見ると、鉢が風で倒れないように針金と金具でブロックに引っ張ってありました。使っている金具は古い蹄鉄ですね。
藤井さんご夫婦は乗馬をされているのです。通販のロデオマシンではなくてほんとの乗馬ですよ。それで、奥様が１ヶ月ほど前に落馬して腕を骨折。毎日リハビリに通っているそうです。「腕がこんなだからなかなか庭のことができなくて、もっと花いっぱいになってる予定だったんだけど、せっかくの撮影なのに残念だわあ」とおっしゃっていました。「いやいや、充分にいい感じになっていますよ！早く腕を治して、花いっぱいになった庭をまた撮影させてくださいね」。

ご夫婦は庭を楽しみ、乗馬に通い、さらに養護学校のボランティアもされていると聞きました。いつも笑顔で、前向きで、センスが良くて、尊敬すべきおふたりなのです。すばらしいなあ！

気難しい若木のオリーブに花が咲いていました。いい感じです。

乗馬の怪我で花の手入れができないと言いつつ、それでも庭にはたくさんの花が咲いていました。

 

 

鮮やかな花、静かな花、可憐な花、

 

 

ファインダーをのぞいていると「夢の世界」に迷い込んだような錯覚を覚えます。

 

 

花は昆虫になった気分で撮影すると楽しいんですよ。

 

 

アシナガバチが数匹、忙しく庭を行き来していました。

今日にも梅雨入りか！だそうです。毎年この時期には時間をみつけては円海山周辺を散歩しています。気持ちいいですよー。アジサイとウツギが咲いて、まだ新緑と言っていい生命力に満ちた木々の葉っぱの間を川トンボとチョウチョが飛び始めます。それと、瀬上池周辺のホタルもこの時期です。梅雨時期の円海山、靴はドロドロになりますけど気持ちはスッキリピカピカになりますよ。昨日に引き続いて、昆虫になった気分で庭の花を追ってみましょう。

 

 

こうやってちょっとアップで撮影するだけで、道路から、あるいはリビングから眺める花と、まったく別物の美しさを感じます。

 

 

この色とりどりの花も、昆虫にはほとんど白黒でボンヤリ見えているそうです。そして花は昆虫にとって生活の糧を得る仕事場ですから、人間が感じているような花への感情はわかないのでしょう。人間で良かったですね。花はいいなあ。

 

 

人間以外で人間以上にこの庭を楽しんでいるのがこのワンちゃんです。飼い主の育て方なのでしょう、とても穏やかで、自由奔放で、ゆったりと庭での時間を過ごしています。きっとこのワンちゃんには、庭の花は美しく見えているんじゃないかなあ。風の心地よさや日差しの温もりを満喫している、そんな気がします。

明日は藤井さんちの最終回、夜景です。

予報通りに梅雨入りしましたねえ、朝からいい雨です。
晴れの日は晴れやかに、雨の日は情緒たっぷりに過ごしましょう。雨に濡れた庭もいいものんですよね。
雨音と同調するように Kenny・G をBGMにして、さあでは、今日も始めます。藤井さんちの最終日、日没から夜までを写しましたので、順に並べてみましょう。
昼間とは違う庭の表情、しかも時間とともに「違う庭」みたいに変化します。

 

 

 

このくらいの時間が夜景撮影のゴールデンタイムです。

 

 

当初は裏庭のご相談だったのが、こうして前庭をリフォームすることになりました。とても喜んでくださっていて、ときどき店に来られては「大満足していますよ！」と満面の笑顔で声をかけてくださいます。うれしい仕事でした。

「藤井さん、ありがとうございました。工事完了後に庭を楽しんでいる感じが伝わって来て、とてもうれしい撮影でした。これからも、庭のことに限らず何かお手伝いできることがあれば声をかけてくださいね。『カレーパーティー』、楽しみにしています