野菜と花苗の植え替え時期に、なぜ人は笑顔になるのか。それは手にしている野菜苗が、1ヶ月後、2ヶ月後に大きく成長し、収穫して食べるときのメニューと味わい、そこで交わされる会話まで想像しているからです。合理的に考えれば、野菜はスーパーで買った方が安いわけですから、単に食材としてではなく、それを育てる時間に浮かぶ幸福な未来をイメージできる、という点が人を家庭菜園へと誘なうのです。草花もそうで、数ヶ月後に花いっぱいになった庭で繰り広げられる家族の時間を、未来予想図として、ワクワクと思い描くことが楽しいから植えているのです。
そうやって庭仕事をしながら得られるのが、五感への刺激。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚が活性化します。経験者はご存知の通りで、五感が整うと第六感が研ぎ澄まされてくる。ご主人方、ドキッとするでしょ。奥様が庭好きだと、理屈じゃなくて、感覚的に鋭い指摘の矢が飛んでくることがありますよね。理屈脳の男たちには太刀打ちできない女性の第六感。あな恐ろしや恐ろしや。
男性諸氏、ガンジーのように無抵抗主義を貫くのもいいけど、本当は奥様の第六感を褒め称え、一緒に、というか率先して庭仕事をするのが正解なのです。ぼくの見る限り、その偉業を成し遂げた男性は全員カッコいい。夫婦共々、庭で五感を活性化させ、理屈の応酬ではないノンバーバルな幸福を築く。これが理想の夫婦像だと、ぼくは思うのですが。
庭ですよ庭。秋の植え替えに一汗かきましょう。夫婦円満のためにも。