見上げさせる威力
「上永谷に出現した巨大な花がSNSで話題になっているらしいですよ」と、お客様から教えていただき、早速現地へ。それは環状2号線の緑地帯に、放置されたように生息しているリュウゼツランの花でした。
早朝6時、まだ誰もいないかと思いきや、20人ほどの人がその勇姿を撮っておこうと、スマホを空に向かって掲げています。
うれしい光景。このように人を上向かせる自然の力に、これまで何度も感心し感動してきました。皆既日食、流星群、虹、植物ではソメイヨシノ、ノウゼンカズラ、アーチのバラなど、道ゆく人を立ち止まらせ見上げさせる自然側と、見上げる人側との関係性が素晴らしいことだなあと、以前からそう考えていたのです。
教会のステンドグラスは礼拝堂に集った信者が見上げる位置にあります。人は見上げる時に瞳が開き、気道も開いて大きく息を吸い、背筋が伸び、その姿勢にリードされて気持ちが晴れやかになる。つまりそれは、苦悩を胸に教会を訪れた人を希望へと導く装置的な美術、インスタレーションというわけです。
そのシステムを自然が心得ているとしたら、まんまとその手に乗って、人は日々空に手を合わせて感謝すべきです。あるいは自然界にそのような、自分たちの心身を良い方向に導く力があるのだと信じる人もまた、お天道様に感謝して暮らしていることでしょう。
自然はあなたの味方になってくれます。アマテラス(太陽)、ツクヨミ(月)、スサノオ(海)の三貴神を筆頭に、あらゆる自然現象に宿っているとされる八百万の神々。その伝説を信じるか信じないかはあなた次第なれど、逆に自然界に神を感じず生きるのは、難しすぎると思いますよ。
庭があるのに、そこに出ないで、自然を浴びることなく暮らしているあなた。勿体無いというか、それはあまりに不利なこと。日々自然を感じ取って生きるように、ぼくらのDNAは仕組まれているのですから。この先自然が酷しくなるほどに不自然な者は淘汰される。だらか自然に親しみ、自然を取り込み、自然体で暮らすのが大事です。
そうそう、百年に一度の珍現象と思いきや、調べたら全国各地でリュウゼツランが開花しているとのことで、これは七月の猛烈な暑さが引き鉄になったものと思われます。
もうお盆なんだし、いくら何でもあと少しで晩夏の情緒を味わえる日が来るでしょう。外仕事の皆様、頑張りましょうね。