その時の生徒さんたち(私よりずっと年配の方がほとんどです)は、その後ご自宅の庭を楽しみまくっていて、今でも時々声をかけてくださり、庭の近況やご家族のことなどを教えてくれます。その度に「横浜に来た時は誰も知ってる人がいなかったのに、親戚が増えたみたいでうれしいね」と妻に。妻もそのことがこの仕事の大きな魅力であることをスタッフたちによく話しています。
その頃のことで忘れられないのは、生徒さん(庭達人の奥様方)同士で話が盛り上がって、みんなでお互いの庭を見学に行こうということになり、それではとグレースランドが幹事を買って出て、自然発生的に“オープンガーデン”が実現したことです。私も運転手をやりつつ、行く先々で木の剪定方法や庭の構成についてなどをお教えし、逆に庭達人たちに草花や肥料のことなど教わるなど、実に有意義なイベントでした。その中の一軒が福永さんちで、庭を眺めながら奥様の手作りパンをたらふくごちそうになりました。優雅で満腹なひとときでした。この手作りパンがホントに美味しくて、その後も時々いただきます。そのたびに、家族で奪い合って食べています。
そんな奥様から1、2年に一度くらいのペースで庭の模様替えの依頼があります。「庭に出る家の脇の通路を落ち葉掃きが楽なように飛び石のまわりを固めたい」とか、「ハンギングができるようにブロック塀の前に木製パネルを立てたい」、「植え込みの土が多くなってきたのでピンコロを積んで土留めにしたい」など。日々庭に出ながらじっくりと考えてからのご依頼なので、いつも私が設計する必要がなくて、そんなわけで、気が付けばこれだけ仕事をさせていただいているのに福永さんちの提案図面は存在しません。コツコツとほんの少しずつ進化してきたその庭のデザイナーは福永さんなのです。
“忙しい人ほど本を読む”と同じで、忙しい人ほど精力的に庭仕事をするような気がします。福永さんがまさにそれで、いろいろな集まりに出席し、旅行も頻繁に行きながら、家ではパンを焼いたり書に没頭したりという日々。とにかく何事にも興味津々な方で、だから常に忙しいのです。ご家族や近所の人たち、そして私もそんな福永さんのエネルギッシュな様子をまぶしく眺めつつ良質なパワーをもらっています。