新築から6年経過した矢野さんちの庭に「癒されました~」。私、この癒されるという言葉が、こと庭に関しては実のところあんまり好きではなくって、というのは、癒しはマイナス世界からプラマイゼロへ向うということで、もちろんそれも庭に欠かせない重要な要素ではありますが、私としては庭はプラス世界の、もっと積極的に、家族のさらなる幸せを実現するための場所。笑顔増幅装置、一家だんらん、悦楽の庭、そういうことをイメージして設計しているからです。そんな私が心底癒された~と感じたということは。私、疲れているんですねえ。
そんな疲れが溜まっている私を再びプラス世界に引っ張り上げてくれたこの庭。一見地味ですけど、この地味さが、庭を放ったらかしにしていたからじゃなくて意図的にそれを楽しんでのことだというのが、立派に咲いたヒマワリでわかります。この静かな庭に咲いたヒマワリ、こちらの奥様そのままで、しっとりと落ち着いた暮らしをしながら、高橋真梨子似の奥様はいつも笑顔。たぶん私より一回りくらい年上の方に失礼かもしれませんが、かわいい方 なのです。
で、昨日前振りした古美る(ふるびる)についてです。庭の構成素材を考える時にこの古美るということを意識します。時間が経つほどに風合いを増す素材を使いたいということ。アルミ製品、コンクリート製品、樹脂(プラスチック)製品は、施工直後がベストな状態で、後は劣化した印象になるもので、それに対して木材、石材、レンガは古くなるほどいい感じになります。メンテナンスや安全性など、素材選びで考えるべき要素は多々ありますが、できる限り天然で、古美るもので庭を構成したいと考えています。
この庭のレンガテラス、歩かない部分が苔むしてきました。でもその苔をブラシで掃除しようとは思いませんでした。こちらの場合、そのままの方がいい。奥様が「木工フェンスが色あせていい感じになってきたでしょう」とうれしそうにおっしゃっていて、提案時から今まで、この“古美る”ということについて奥様と話したことがないのに、6年過ごした今そういうコメントをいただいたことに、内心小さくガッツポーズでした。
よく、女房と畳は・・・などと言いますが、わたしは自信を持って「女房と庭は古い方がいい」と、自信を持って、自信を持って、えぇ。