ガーデンリフォーム(横浜市 南区)
眺める庭から過ごす庭へ。
栗原さんちは典型的な眺める庭、よく手入れされ落ち着いた雰囲気の日本庭園です。以前は建物部分が芝生だったそうですので、芝生と石組みと灌木と池、大正から昭和初期には最上級の「風情を旨とする庭」であり、文人や粋人旦那衆好みのいわゆる「文士の庭」というスタイル。東京だと早稲田あたりにこの手の庭が多く残っています。
まあそれはそれとして昔のお話でありまして、現在では、眺めて粋や情緒や風情を楽しむだけだと庭の魅力は半減どころか意義を失ってしまい、手入れにだけコストがかかるという暮らしのお荷物にもなりかねず、とはいうもののはてさて、このお爺様から受け継いだ庭をどうしたものか。ここまで和風じゃないにしても、昭和までの庭づくりは「眺める」という点に主眼が置かれていましたから、世代が変わると「ちょっとねえ・・・どうしてくれましょう・・・ぜんぜん楽しくないんですけど」と現状に疑問を感じて、長いこと考えあぐねてうちに来られる方は多いのです。
ぼくの回答はとてもシンプルです。時代は変わる(ボブ・ディラン)、めぐるめぐるよ時代はめぐる(中島みゆき)、めぐるめぐる季節の中で(松山千春)重いコートは脱ぎ捨てなければ(谷村新司) というわけで、「眺める庭から過ごす庭へのパラダイムシフトを」。
Plan A
Plan B
庭の現状に疑問を感じた奥様にこの2つをご覧いただいたところ、目から鱗がパラパラとはがれ落ちたようで、瞳は10000ボルトに輝きました。この仕事をしていて最高にうれしい瞬間です。
では細部を具体的に、他にご要望は?こんな楽しみもありますよ、お嬢さんのお好みはどうでしょう、あ、それとご主人はどんな庭をお望みでしょうか、などなどあれこれ検討を重ねて出来上がったのがこれ。
Plan C
左右に分割します。
左側
右側
左側が過ごすスペースで、右は育てて眺めて庭を感じる場所と部屋が外に広がったように感じられる、部屋と庭をつなぐ、昔で言うと縁側的な場所という3部構成になっています。
ではでは、大好評のビフォー・アフターを。
ついでにといいますか、新たな庭をとてもよろこんでくださった奥様から「玄関先の植え込みもいい感じにしてください」というご要望で、リニューアルした道路沿いの花壇も。
道路から庭へ、そして部屋からの眺めへと移動します。
続きまして植物を。わがチームの頼れる園芸担当須藤ちゃんが、奥様と打ち合わせながら仕上げました。
ジューンベリー
オリーブ
アオダモ
レモン
ギボウシ
プリンセスダイアナ
イングリッドバーグマン
いつものマリーンライトと LEDフラットライト で、夜はこうなります。
庭の完成と同時に栗原家に家族が増えました。名前はコロ。
最後にとても印象に残っている奥様の言葉を記しておこうと思います。
夫婦って面白いわよね。最初は恋人同士、そして結婚したら夫婦、次は同居人、その次は戦友になる。
ご主人が体調を崩され療養に入ったことが、庭をリニューアルしようと思うきっかけだったそうです。庭ってそういうもので、よりよく生きようと、丁寧に暮らしていこうという気持ちを持った時に存在意義を発揮してくれる不思議な場所だなあって、改めて感じ入った次第です。
栗原さん、大丈夫。花咲く庭があれば人生は上々に展開することをぼくは知っています。