さあ張り切っていきましょう!今日から新シリーズ、ぼくの親とほぼ同じ年齢のご夫婦の庭、森川さんちをご紹介します。
ビフォーはこんな具合です。
小高い丘の上にある気持ちのいい風が吹く住宅地。分譲が始まって30年以上が経過して、今では街路樹や庭の木々も生長し、いい感じに濃密なご近所付き合いもある街になっています。晴れた日には富士山がドドーンと大きく見えて、春は街中が植物園になったようにいろんな花が咲いています。ぼくが先々住んでみたい場所のひとつで、うちのお客様も大勢暮らしているところです。
森川さんはご近所に住んでいる神出さんちの庭(2006年7月8日「横浜の若大将(神出邸2)」)をごらんになって、神出さんからうちのことを聞いてガーデンリフォームを依頼してくださいました。こういうことも住宅地が成熟していて、良好なご近所のコミュニケーションがあるからこそのことです。ありがたい気持ちとともに「やっぱりいい街だなあ」と感じました。
森川さんがここの地に家を建てた時点では、宅地開発が始まったばかりの丘陵地に数件しか家がなかったそうですが、今では見渡す限りの住宅地。家が増え、住人が増え、町内会ができて、住民の交流が深まっていって・・・、その街の成り立ちを体感しながら、森川さんご夫婦もまた素晴らしい時間を積み重ねてこられたんだなあと思い、その舞台として活躍して来た庭を今リニューアルしようということですから、ぼくとしてはこれまで以上に森川さんちの暮らしが楽しく展開するような提案をしようと、気合いを入れて設計しました。これがそのプランです。
Plan A
Plan B
両方とも考え方は同じで、素材を変えてのご提案です。
設計のポイントは、
1、庭に出やすくすること。
2、過ごす場所をつくり、そこを居心地よく演出すること。
3、庭全体を使うようにすること。
4、雑草取りの苦労を減らしつつ草花を楽しめる庭にすること。
5、夜も過ごせるようにすること。
この2プランをじっくりと検討していただいて、出来上がったプランを明日ご覧いただきます。
昨日ご覧いただいた2プランをもとにしてできあがったのがこれ、
Plan Cです。
Plan C
おしゃべり好きで和やかな会話が途切れることのない森川さんご夫婦が、お子さんのご家族が、近所のお友達が、わいわいと集まるシーンをイメージしながら設計しました。そしてそのイメージをカタチにするために、けっこういろんな理屈やテクニックを組み合わせての設計でした。
もう一度ビフォーをご覧ください。
この風景をベースにしてどこまでイメージを展開して、どこまで理屈を組み立てられるかという設計作業、楽しいですよお!いい具合に描けなくてもがき苦しむこともありますけど、・・・そう言えば最近苦しくないなあ。設計頭(設計の思考回路)が整ってきたのか、設計に必要な引き出しが充実してきたってことかなあ。まあ、楽しいことはいいことです。
明日はビフォー・アフターです。
それでは森川さんちのビフォー・アフター、いきましょう。量が多いので今日と明日の2日間やります。
まず今日は、家の脇の庭入口から順に奥へと歩いていきます。
Before 1
After 1
Before 2
After 2
Before 3
After 3
Before 4
After 4
Before 5
After 5
楽しいなあ、ビフォー・アフター。何度やっても楽しい。
着工から完成までの長い時間が一瞬になるんですよね。その一瞬に職人さんとスタッフの熱意や努力が凝縮される。ゴージャスな一瞬なんです。
これまで溜め込んだビフォー・アフターをブログにずらっと並べてみたいんですけど、設計作業の手を休めることはできないし・・・、どなたかパソコンが得意な方、サクサクと手伝っていただけないでしょうか。
明日は庭の反対側の入口からです。
反対側の庭入口から。
Before 6
After 6
リフォーム後、ものすごく庭が広くなった感じがすると思います。これはさら地に庭をつくっても、今回のようにリフォームしても同じで「こんなに広かったんだ!」という感想をいつもいただいているのです。
Before 7
After 7
同じ面積なのに広く感じる要因は3つあって、1、ゾーニングと導線計画で効率よく敷地を活用している。2、立体構成で空間に厚みを持たせている。3、それぞれのゾーンに意味(楽しさ)が生まれて意識に入ってくようになった。ということ。
Before 8
After 8
家を建てた経験がある人は、地鎮祭が終わって地縄が張られると「こんなに部屋が狭いんだ」と感じたのではないでしょうか。それが壁と天井ができて、ここは子供部屋、ここはリビングというふうに家になってくると、もう狭い感じはしない、そういうものですよね。庭もそれと同じなんです。
Before 9
After 9
きちっといろんなこと考えて、いろんな要素を組み合わせて設計された庭は、それまでとくらべて1.5倍~2倍も広くなったように感じるものなのです。
Before 10
After 10
楽しさとか、ワクワク感、そういった庭への期待感がともなうことも庭を広く感じさせる要因ですから、「今までよりも広く感じる庭」イコール「今までよりも楽しい庭」です。
Before 11
After 11
いいでしょう!敷地を買い足さなくても庭が広がって、楽しさが増して。これがガーデンリフォームの魅力なんです。お客様によく言われるんですよ「庭を直して生活が変わった。大げさじゃなくて人生が変わりましたよ」って。
庭の全景をご覧いただきます。
撮影当日は一週間ぶりの晴天で、翌日からはまた雨と雪が一週間続きました。ラッキーな一日でした。
雨が似合うタイプの庭もありますけど、こちらの場合は晴天がいいですね。
まだ完成直後にもかかわらず、奥様がせっせと花を植えていて、この調子だったら5月の末には花いっぱいになってオープンガーデンがやれそうです。
今回設置したアーチとパネルが生け垣より高くて、近くを通るバスから見えるので、知り合いの方が庭の変化に気づいて「庭を直したの!見せて見せて!」とよく電話がかかってくるようになったそうです。やっぱりいい街です。田舎みたいなその感じが、何だかホッとしますよね。できたての街じゃあそんなことないですからね。
お友達が、玄関からではなく、このアーチをくぐって庭からやってくる、そういう雰囲気の庭になりました。
この庭の中心はリビング外のテラスです。
テラス全体を少し持ち上げて、部屋とフラットにしました。
広さは円の直径が3メートル20センチ、大きめのテーブルを5、6人で囲める広さです。
背後にはタカショーのe-ウッドパネルを3枚。センターが強調されたものを円の中心と合わせることでテラスの構成物という意味合いを出しました。
年期の入った生け垣がしっかりと仕立ててあるので、目隠しの必要はないんですが、このパネルがあることでテラスの居心地が格段にアップします。これが立体構成の効果なのです。
家側の席に座って撮影しました。どうでしょうか、もしパネルがなかったら・・・、全然違った感じになるでしょ。
このパネルは2ヶ所のアーチとも呼応して庭全体に厚みを出す効果も果しています。さらに、植物をぶら下げたりからめたり、リビングの壁を飾るように、テラスと室内からの眺めを楽しいものにしてくれるという、何役もの役目を果たしてくれています。
建築設計なら壁はもともとあるもので、それをどのように扱うかが設計士の考えるべきことなんですけど、庭の場合は壁の存在をイメージするかしないか、壁があるかないか、というところからの組み立てなんですね。いっぺん、あなたが見慣れている庭に自由自在に壁をイメージしてみてください。全く違う空間が生まれますよ。
テラスがあるとなりの部屋からも出やすいように、ユニットデッキの足を切って設置しました。縁側のイメージです。スッキリとしたタイルのテラスもいいですし、この縁側の木の感じもまたいいものです。
庭の両サイドに白いアーチが設置されています。昨日チラッと解説しましたが、この2台のアーチとテラス正面の木製パネルが相まって立体構成して、庭全体を厚く感じさせています。パネルとアーチの高さまでの空間も庭、となるのです。
玄関脇からの通路に設置した扉付きアーチの奥に、やや大振りにつくった立水栓があります。これがアイストップになって、招き入れる効果と奥へのスムーズな誘導を促す効果があります。このアイストップについては解説がなが~く必要なので、また今度ということにして、ようするに曲がり角には目が当たる何かがある方がいい感じになる、ということです。
立体構成とかアイストップとか理屈っぽいでしょ。理屈を積み重ねて、その積み重ねるときの接着剤として感性が作用して、あ~!また長くなりそうなのでここまで。
今日は理屈っぽいモードになっていて、最後にひとつだけ。アイストップ効果を出すためには地面から1メートル50センチ以上の高さが必要です。これは設計的に人の目の高さを1メートル50センチと考えるからで、目より高いか低いかで、そのものの存在は意味が違ってきます(自宅のインテリアにも応用できますよ)。でも今回は立水栓ですからそこまでの高さを出したらごつすぎるし変ですよね、そのアイストップとして足りない高さを、地面にレンガで円形を描くことで補った、そういうデザインなのです。
あ~、ちょっとスッキリしました。こと庭の話になると脳内に理屈が渦を巻いて暴れだして、耳や目から漏れだしそうになるんですよ(ホラー映画みたいに)。
この庭は集う場所(テラス)の周囲に、ガーデニングを楽しむ場所があるという構成になっています。ガーデニングエリアは花壇をつくるのではなくて、通路をつくって、通路以外は植える場所、というやりかたです。花に埋もれて楽しむような庭を設計する時には有効な方法で、植栽スペースの土が見えなくなるまで草花を育てて、通路のアウトラインも見えなくなって、歩くとハーブが足に触れて香りが立ち上ってくる、そんなイメージ。いいでしょ。
通路に使用したのはヤキスギレンガ(赤煉瓦倉庫のものと同質のレンガ)を使っていて、奥様のリクエストで違う色のレンガをランダムに混ぜて使っています。
この風景の土の部分いっぱいにハーブや草花が茂っているのをイメージしてみてください。アーチにはバラが絡んで、樹木も増えていく予定です。テラスの脇にジューンベリー、なんてのもいいですねえ。
テラスの反対側には円形の花壇。中央にオベリスクが立ててありました。これは大正解で、椅子に座ったときに目の高さで花が咲いているってものすごく素敵なんですよ。それとこのオベリスクによって、庭に奥行きが出ます。
続いて照明器具。いつものマリンライトを3灯設置しました。
日が暮れたらカーテンを開けて、もう少し暖かくなったら夕飯は外で、夏の夜は相模湾から鎌倉の山を通って吹いてくる風に癒されて、秋は松虫の声を聞きながら月見酒。冬はまた部屋から眺める夜の庭を楽しむ。たった3灯のライトで、暮らしかたが庭へと大きく広がります。
リフォーム前の庭にはいくつかの庭石が据えてありました。こういう場合に、こんどは洋風の庭になるんだからといって捨ててしまおうとする人も多いんですけど、ぼくはほとんどの場合それを使います。石っていいですよ、いくらあってもじゃまにはならない。使い方としては和風の石組みだったものを組み直してキャンプ場のバーベキュー炉みたいにしたり、ベンチや花台として使ったり、量が多い場合はロックガーデンにしてコニファーをアレンジしたりします。今回は石を扱うのがうまい職人さんだったので、庭の雰囲気を出す景石として据え直してもらいました。洋風の庭に和の点景物、悪くないんですよこれ。
リフォーム完成間のないのに、すでに庭は森川さんらしい小物が点在していて、「楽しみにしてくれたんだなあ」とうれしくなりました。
ご夫婦の趣味は旅行で、家の中にも思い出のお土産がたくさん飾ってあります。いろんな土地で感じたことや過ごした時間の思い出に彩られた暮らし、いいですねえ。
中でもグッと来たのがこれです。
こういう置物が似合うご夫婦なんですよ。おふたりでこれを買い求めたときの様子が目に浮かぶようです。
啓蟄(ケイチツ/冬ごもりしていた虫がはい出す頃/3月6日)が過ぎて、近所の梅林は満開で、桜のつぼみも膨らんできました。何だか時候の挨拶みたいですけど、この時期が庭屋にとっては一年のスタートって感じがするんですよ。梅が咲くと気合いが入る。虫と一緒に庭好きのお客様の気持ちもウズウズしだして、設計依頼もグーンと増えてきます。
森川さんちの庭も春です。いい実がたくさん成るという梅が見事に咲いていました。
何本かお持ちのオールドローズも勢いを溜め込んだ新芽が出ていて、5月の末にはゴージャスなバラの香りが漂う庭になります。
アジサイも芽吹いて、
春を告げる花、ユキノシタも咲いていました。
チューリップの芽も出て、ここから一気に上がって来ますよ!
庭のスタートは春。春夏秋冬というように、春から一年が始まるのです。さっ、そろそろ(秋までの庭をイメージして)春の花を植えましょう!
50歳以上の方はご存知だと思うんですけど、むかし、西武百貨店の広告で「おいしい生活」ってのがありましたよね、糸井重里のコピー。当時、新潟の実家(魚沼市)で暮らしていたんですけど、どういうわけか広告にはまっていて、2時間かけて新潟市の紀伊国屋まで行って広告批評やコマーシャルフォトなど広告業界の雑誌を買い込んでいました。バブルに向ってまっしぐらな時代での広告って、ものすごくおもしろかった。全ては糸井さんの「おいしい生活」から始まった感があり、後に豊島園の「プール冷えてます/大貫卓也」とかリゲイン「24時間戦えますか/黒田秀樹」なんて頃がピークだったかなあ。十数秒の映像とたった一行の言葉が時代を導いていく感じに、たまらないかっこよさを感じていたんです。電通、博報堂には感性で時代を動かしている人たちがいるんだと。
コマーシャル同様、時代の息づかいや鼓動を感じるということで夢中になっていたのが雑誌、ポパイやブルータスのマガジンハウス社です。26歳で東京に出て来て、まず行ってみたかったのが歌舞伎座の裏にあるマガジンハウスでした。入口はポパイとオリーブが描かれている観音開きの自動ドアで、ロビーには世界中の雑誌が閲覧できるギャラリーがあって、マルチビジョンで一日中CNNが流れていて・・・「東京だあ!」って思いましたよ。
新潟にいると、感性はじゃまなものでした。田舎では今でもそうですけど、土を掘ること、作物を収穫すること、物を移動することが仕事で、写真や絵や音楽や、そういうことに時間を費やすことを道楽と言います。田舎にあって、典型的な役立たずの道楽者だったぼくにとって、広告や雑誌から見えてくる東京は「道楽者が活躍できる夢の世界」でした。糸井重里の「おいしい生活」が、数年後に東京に出てくることになるきっかけだった気がしています。
森川さんちを撮影しながら久しぶりに「おいしい生活」が思い浮かんだんですね。それで今日はこんな昔話から始まったんですけど、この庭はまさに「おいしい生活」なんです。果樹や野菜やハーブや。観て楽しむ植物に混じって、収穫して食べたり、家の中での楽しさが膨らむ植物が植わっていました。
キンカン
レモン
パセリ
コマツナ
このコマツナはスーパーで買って食べた後に残った根っこを、「生えるかもしれない」と庭に植えたら、こんなに見事に育ったのだそうです。楽しいですよねえ。
ミント
ラベンダー
ローズマリー
花も野菜も果樹もハーブも、ボーダレスで植わっている庭って「楽しく暮らしてるなあ」って感じがしていいもんです。これってファミリーガーデンのひとつのスタイルですよね。
この日は春の長雨の合間の貴重な晴天。撮影を始める前に、あまりに心地よい天気だったので、テラスの椅子に腰掛けてくつろがせていただきました。
奥様が「いまお友達からこんなファックスが入ったのよ」と1枚の紙を。
森川様
先日は楽しいひと時をありがとうございました。約束をした“脳が喜びを感じる時”の話です。
? 前向きで明るいこと
? 意地悪をしない、悪口を言わない
? 人のために尽くす
? 出来ないと否定語を使わない
? 目標を持つこと
? 人格が変わるくらい全力で行動する
? 立場が違っても共に生きる姿勢でいく
脳博士 林成之さんの話です。
またお会いできますことを楽しみにしております。気候の変化の大きいときです、くれぐれもご自愛下さい。
いいなあ、充実した交友関係がわかりますねえ。こういうことを日々意識しながら暮らすことの大切さは、ぼく自身身にしみていることです。「脳が喜びを感じる時」、タイトルは自分の脳によろこびを与えるためのことみたいですけど、中身の大半は人とのかかわりかたが並んでいて、つまりは人間は、人との関係性の中で生きている動物である、ということですよね。支え合って、お互いに成長し合って、それで喜びを感じるように脳はできている。やっぱり人間は、群れで暮らす生き物なんだということ。自らを省みることなく漫然と暮らしていたら、自分自身よりも先に家族や周囲の人たちに弊害が生じて、ついには自分が群れからはじき出されてしまう、というふうにも読めます。
よく晴れた朝にお友達からこういうファックスが届く。いいですねえ、この感じ。
続いて奥様が、額に入った写真を持ち出して来て見せてくださいました。この庭が花いっぱいだったときの写真でした。これまで充実した暮らしをされてきたことが一目瞭然。花の数と住む人の幸福感は比例しますからね。
「二十数年後、我が夫婦は森川さんちみたいに、こんなに充実した暮らしを実現できているだろうか」なんて思ってしまいました。こういう出会いがありがたいんですよ、ほんとに。「いいなあ、こういう生き方」「すてきな暮らしかただなあ」と感じるお客様との出会いは、そのまま生き方の手本になりますから。たくさんのすばらしいお手本のおかげで、我が夫婦は迷い道に入ることなく手をつないで歩いていけてるんです。いろんな局面で「お客樣方だったらどう判断するかな」とか、「どう切り抜けるかな」と考えられることのありがたさ。森川さんちもそうですし、年々ぼくたちの人生のコーチ、すばらしいお手本が増えていきます。
森川さんちの草花をご覧いただきながら。
今日、ある方の葬儀が行われます。95歳のおばあちゃんで、ぼくはお会いしたことがありません。本を読んでその方のことを知って、「うちのばあちゃんとそっくりな人だなあ」と、一度会いたいと思いながら、それが実現しないまま、残念ながら旅立たれてしまいました。
今年はぼくの祖父母の7回忌です。祖母は太陽のように生きた人で、祖父は飄々と商いを楽しみつつ、たくさんの「ありがとう」を集めた人生でした。祖母の死顔は木喰尚人が彫った仏像みたいに満面の笑み(母親がおもしろがってそういう化粧をしたんですけど、花に囲まれて、ほんとににっこり笑っていました)、祖父は全てをやりきったという満足感に満ちた、木目をきれいに残したまま燃え尽きた炭みたいに清々しく美しい顔で旅立ちました。
身内や知り合いの死って、ほんとに変な言い方なんですけど・・・「ありがたいなあ」って感じます。生きてるからこそがんばれるんだということ、悔いなく今日を生きなさいって、先に逝った人たちはみんなそう言って応援してくれているようで。
しげるさんへ
95年の素晴らしい人生を送られたしげるさん、会いたいと思ったら早く会いにいけばよかったんですけど・・・。まあそのうちぼくもそっちに伺いますから。うちのじいさんとばあさんはひと足先に行って待ってますんで、会ってみてくださいね。ふたりともしげるさんと同じようにすばらしい人生だったので、楽しい話が尽きないと思います。
ぼくも、お会いできる日まで、がんばりますよー!
庭を設計する時に、庭のことだけ考えていたら片手落ちなんですね。生活の中心となる場は庭じゃなくてリビングですから、過ごす庭、生活空間としての庭を提案するならなおのこと、リビングから見た庭、庭とリビングの関係性を考えるべきです。
リビングから庭を見ると、ねっ、テラスの向こうの木製パネルが効いてるでしょ。
今回もテラス全体を持ち上げて、庭と床が同じフィールドという感じにしてありますから、リビングにいて、気が向けばスッと庭に出られます。
そしてそこにはチークの椅子とテーブル。ティータイムはもちろん、食事をしてもいいし、本を読んでもいいし(自然光での読書は目が疲れないそうです)、洗濯物をたたんでもいい。生活が外に広がりました。
これからの住宅は、リビングの掃き出し窓が折り戸や観音開きでフルオープンになる、そういう家が増えるんじゃないかなあと思ています。そうなったらいいなあと。
庭とリビングが解け合ったような家で暮らせたら最高!ヨーロッパの家ってそれを意識してますよね、スペインのパティオや、プロバンスの、庭もリビングも花だらけでその境がわからないような家。日本家屋だとその役を果たしているのが縁側ですね。庭にいるような、家にいるような感じの場所。
庭を考える時に、庭だけを考えるのではなくて、リビングと庭、寝室と庭、子供部屋と庭ということも考える。庭がある暮らし、その暮らしかたまで考えると、庭は何倍も魅力的な価値を持ちます。
森川さんのご主人は大手旅行会社勤務の後、大学で教鞭をとられていました。ご夫婦はその大学の関係でハウステンボスに5年間住んでいたという、うらやましい経験をされています。そして趣味は旅行で、国内、世界各国、兼高かおる世界の旅みたいにあらゆるところを旅行していて、奥様曰く「いい人生だったと思うなあ」と。なんて聞くと、もう満足しているかのようですけど、ぜんぜん。撮影の日も「外国のレストランで言葉が通じないと不便だから」と言いながら英語の勉強をしていました。ものすごいパワーです。
テーブルの上には先日行って来たという富士屋ホテルのパンフレットと写真が、
他にもハウステンボスでの花いっぱいの庭の写真と『地球の歩きかた/イギリス』。
うらやましい限りの充実した日々を送って来られて、これからもますます意気軒昂なご夫婦にあやかろうと、記念撮影させていただきました。庭からの光をバックにパシャッと。
おふたりともいい顔してるでしょう!あぁ、こういう夫婦になりたいものです。あやかりたいあやかりたい。
旅行が趣味の森川さんご夫婦です。ご主人が旅行会社に勤務されていたということで、世界中どこに行ってもガイドしてくれる後輩社員さんがいるそうで、いいですよねえ、心強くて。お2人にとっては地球はずいぶんと小さいものなんでしょうねえ。そう言えば、ご主人が宇宙旅行のことを話してくださったことがありました。もうすぐ大型客船の旅くらいの感覚で宇宙旅行ができるようになるとのことでした。どうももうひとつピンとこなくて「宇宙旅行かあ、ぼくは宇宙よりハワイの方がいいかなあ」なんて答えましたけど、そんなふうに大きな感覚で生活しているから日常的な感じで海外に行けるんでしょうねえ。何事も大きく捉えると人の何倍もの経験ができる、ということなんですよね。
リビング中に旅の思い出が所狭しと飾ってありました。
旅行が趣味で、その旅先で購入した思い出の品に囲まれて暮らす。スッキリとわかりやすい組み立てで、その感覚もまた勉強になったことです。好きなものに囲まれて暮らす、自分のことを肯定しまくった環境をつくり上げて、そしてそこで生活すれば、日常が至福の時になるわけですからね。
生活達人、幸せ達人、人生の達人。お会いするたびに話が尽きなくて、いつも長居させてもらっています。今後ともいろいろと吸収させていただきたいお客様です。
明日は最終日、今回撮影した中でとっておきの1枚をご覧いただきます。
今回撮影させていただいた写真の中で、とっておきの1枚がこれ。たくさん置いてあるフォトスタンドの中のひとつで、最初におじゃましたときから気になっていたものでした。「きれいな人だなあ」と。娘さんか、あるいはご親戚に芸能人がいらっしゃるのかなあ、なんて思っていました。撮影時に奥様にお聞きすると、「これ私よ、娘はこっちの女の子」。もうびっくり仰天でした。なんて美しい!そして健康的で聡明で、ものすごく運が強いお顔で、こういうこと言っていいのかわかりませんけど、言っちゃいますが、私の好みのど真ん中です。いやあ、ほんとにおどろきました。
ご主人、よかったですねえ、とびきりきれいな奥様との充実した日々。あやかりたいあやかりたい。ぼくも美しい妻(笑い皺が)と巡り会えたので、あとは充実した日々を積み重ねるだけです。
まだ土が多く見えているこの庭も、2ヶ月もしたら緑濃い、花いっぱいの庭になることでしょう。そしてご家族とお友達と、にぎやかに人が集って旅の思い出話で盛り上がる、そういうシーンが目に浮かぶようです。
森川さんへ
これからもどうかお元気で、素敵な旅と庭を楽しんでくださいね。楽しい仕事をさせていただいて感謝しています。ありがとうございました。