雨ですねえ、夜中から土砂降りでその音で何度か目が覚めました。雨だと現場が進まなくてまいってしまいますけど、これくらい盛大に降っているとあきらめがつきます。
週に一度は今日のようなしっかりと土にしみ込む量の雨が降ることを、庭をやっている人はありがたく思い、同時に自然ってうまいことできてるなあと思うことでしょう。木々が芽吹いて、草花もすごい勢いで花芽が上がってくるこの時期、植物は最も水分を必要とします。その勢いは落葉樹の森にいると木が地中から水を吸い上げている音が聞こえる気がするほど。まあ実際は高性能の集音マイクを使っても聞き取れないかもしれませんけど、越後の山を歩きまわっていた時に、何度もその春の音を感じました。生命力のパワーが満ちて渦を巻いて、それを音として感じたのかもしれません。冬の雨とは違う、明るい空から降り注ぐ雨に歓声を上げているようなレノンの庭の草花を眺めながら、「なんかイイなあ、今日は設計がはかどりそうだ」そんな気分の朝です。
さっ、今日から菊地さんちのガーデンリフォームをご紹介しましょう。
昨日ご家族の写真をアップしました。ほんとイイ感じのご夫婦とお嬢ちゃんたちで、こうしてブログをやりながら完成写真を整理していると、気がつくと私の顔が笑っていて、私の、パソコンに向かいながらニヤニヤしている姿はきっと周りのスタッフからは変に見えていることでしょう。
多少変に思われてもかまやしない。こうして連鎖的に広がっていく笑顔ってありがたいことなんですよ。この仕事しているとつくづくそう思います。ストレスや何らかの原因で笑顔がない人の周囲はあっという間に笑顔が消えていきますし、ひとりでもニッコニコの人がいるとこれもまた水面に広がる波紋みたいに広がっていくもの。かくいう私は、雪深い越後の山奥育ちなもんで、もともとは笑うどころかほとんど言葉も発しないという寡黙な性格。表情筋が未発達なまま大人になりました。それがこの仕事をやっているうちにお客さま方の笑顔に誘発されて徐々に顔が動くようになってきて、そのことの楽しさ、すばらしさに気付いて、今では積極的に顔トレしています。笑顔と笑顔が共鳴してそれが増幅され広がっていく、そういう場にいたい、そういうスタンスで仕事をしていきたいと思っているのです。
ではスマイルファミリー菊地さんちのプランです。
中古住宅を購入されてのガーデンリフォーム。ウッドデッキは十分な広さのものが付いていました。傷みも少なかったので塗装してそのまま使うことになりました。デッキ以外の場所は、前にお住まいだった方が草花が大好きだったようで、ジャングルのようにいろんな植物が生い茂っていて、花物も多くそのまま一年間庭の変化を楽しむという選択肢が浮かんだほどでしたが、少々荒れているというか収拾がつかなくなっていましたし、奥様が「子どもたちが遊べる庭を」というイマジネーションをお持ちだったので、どうせならここまでやりきったら思いっきり楽しめるというところまでプランしてご覧いただきました。あと、玄関先の駐車スペースが育ち過ぎた生け垣で狭くなっていてクルマを停めづらいということと、イメージ一新する門塀のリフォームもご提案させていただきました。
既存のデッキは塗装し直し、コーナーパーゴラとマリンライトを設置。その外側はガ-デニングスペース。そしてデッキから庭の外周を歩けるようにして、一段高い散策路的なガ-デニングスペースその2にし、あとは樹木の配置で適度な目隠しと空間的な厚み、次の場への期待感などを演出。
今回もあれこれと理屈っぽく組み立ててありまして、明日からたっぷりとビフォー・アフターをご覧いただきながら、そのポイントを解説していきます。
まずは外構、駐車場と門まわりのビフォー・アフターです。
見た目明るくなって、リフォームが完了している玄関の感じと調和しました。
機能的にはビフォーの塀が低すぎて、インターホンもポストも低く使いづらい構成だったのを、右の塀を高くしてインターホンの位置を高くし、左の塀はそのままで、上にポストを載せることで使いやすい高さにしました。
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駐車場を狭くしていたレンガ花壇とカイズカイブキを解体撤去したら、十分な広さと明るさが実現。このアイデアに気付いたのはご主人でした。ナイスなイマジネーションです。
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After 2
ついでに、塀の内側のツバキをコニファー(ゴールドライダー)に植え替えて、これで外構のリフォーム完成。
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After 3
使いやすさと楽しさや明るさ、イイ感じが実現しました。
庭に入ったところにぬれ縁を設けました。これはご近所の方とのお茶飲み場になっている田舎の縁側をイメージしてのご提案。できあがってみると、その狙い以上に家族が集う場所、ご家族にとって室内と庭をつなぐ第5の部屋『5th room』として活用かれているようで、その様子は後日あらためてご紹介します。
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After 4
次はこの庭のメインである砂場とベンチの広場。
ここで急に話変わりますけど、昨日久しぶりにスタッフにまかせっきりだった港南台店に行きました(ずっとレノンに庭にかかりきりだったのです)。うちの店はイメージ通りに再開し営業していましたが、本体のホームセンターはというと、ビッグサムがロイヤルホームセンターに変わっていろんな面で混乱が起こっていることが見て取れまして、特に外売り場と1階入り口の店の顔ともいえるスペースがガッシャガシャに荒れた感じになってしまっていました。それが残念で残念で。
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After 5
品数は明らかに増えたのに、それがかえって乱雑な印象を生んでしまっています。うちも店側の立場なので店長や売り場スタッフと相談しながら改善に協力していこうと思っていますけど・・・。ようするにこのビフォーの状態なんです。植物が好きでいろんな草花を植えて楽しんでいるのですが、そこに理念というか完成形のイメージが存在しないままだったために混乱してしまい、ついにはどうにもこうにも手に負えなくなっている感じ。そこに明確なコンセプトとそれに従ったデザインが必要なのです。
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After 6
この店の変わり様というか荒れ様にがっかりしているお客さまも多く、その声が届くたびに申し訳ないような情けないような気持になりつつ、これも産みの苦しみなのだと踏んばって、私自身、少しづつでもこの現状を改善していく方向に動こうと思っていますので・・・。
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After 7
ロイヤルホームセンター港南台店、コンセプトとデザインがいかに重要であるか、そのことの大きな実験場にいる気分です。ビッグサムからのお客様方、どうか広~い心で見守ってくださいね。そうそうその混沌の中ではありますけど今年もすばらしい薔薇が入荷し始めました。ぜひご来店を。
昨日は話が脇道にそれました。
では引き続きビフォー・アフターをご覧ください。今回はビフォー・アフターが多くて、まずはそれらをズラッと並べて庭の変ぼうぶりを感じていただいて、各ゾーンや細部の解説はその後ということにします。
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ビフォーを撮影した時点でこのアフター世界は地球上に存在していないわけでして、それをワクワクしながらイメージできたお客さまの感性というかイマジネーションの強さによってアフターが出現しました。
昨日混沌港南台店から抜け出して菊地さんちに追加工事の打合せにうかがった妻カオリが、帰ってくるなり「また違う花が咲いてたよ。素晴らしい庭だよねえ、あぁ・・・ああいう庭が欲しい」と心洗われたようなスッキリした顔で、高揚感いっぱいに話していました。妻からストレスを消し去ってくれるお客さまの庭、私もそうですけど、日々お客さまに救われながら次の設計に向かう日々なのです。
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After 13
こうしてビフォー・アフターを並べると、あらためてガーデンデザインのポイントというか勘所というか、考えるべきいくつかの基本を感じます。まずコンセプトメイク、どういう意味を持つ、どういう概念の庭にするかということ。次にゾーニング、導線とシーンを考えながら庭を平面的に区分けしていくこと。そして立体構成。基本なんですこれが。中田英寿が彼のその後を追いかけたテレビ番組で言っていました、「トレーニングのほとんどは基本練習です。毎日基本を繰り返す、それ以外のことはあまりやっていない」だそうですから、来る日も来る日もこの設計手法(私が生み出した私流の基本ですから、専門学校などでは違うことを基本としているかもしれませんが)を繰り返している自分もまあいいのかなと思っている次第です。
ほんとに何度も気が遠くなるほどこのやり方で設計していて、で、時々、繰り返しているからこそ見えてくること、さんざんやってみて初めて気が付くことなどがあって、「これが熟練していくってことなんだなあ」などと思っています。基本の反復、きっと何の仕事でも同じですよね。ありがたいのは設計に飽きたことがない。そのつど条件も違えばそこで暮らす家族も違うので、ひとつ設計が完了して次に移るときに「さっ、やるぞ!」と気合いを入れて頭を白紙に戻すだけで、5分後にはその諸条件のクリアに四苦八苦しつつ基本作業に熱中している自分がいます。
数日間ビフォー・アフターをズラッと並べてきました。今日が最後で、明日からは設計のポイントや細部を解説していこうと思っています。
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今日の4ショットはすべてウッドデッキからの眺めで、これを見ながら思い出したことがありましたのでそのことを。
ここ数日お客さまと話す中でパーゴラの効用についてお話しすることが続きました。気候が良くなってきて、お客さまがたの中にデッキやテラスで過ごすというイメージがわき上がってきたのでしょう。「デッキに日よけを設けたい」とか「洗濯物を干しっぱなしで出かけられるように屋根を付けたい」というようなところから話が始まって、少し話していると実は日よけや洗濯物よりもデッキ・テラスでもっと快適に楽しい時間を過ごしたいというイメージが根底にあるのだということが見えてきます。で、パーゴラの話になるのです。
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After 15
「人間は広大なサバンナを駆けまわるインパラやシマウマではなく、森の木のほこらや洞窟に暮らすサルなんです。だから自分より高い物の下や隠れられる木陰にいると落ちつく。そういう習性があるので、パーゴラやデッキ脇の樹木を心地よく感じるのだと思います」
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この話をしながらスケッチを描いて示したり写真で解説したり、みなさんとても納得してパーゴラのある空間をイメージしてくださいます。
このビフォー・アフターでも、何が変わったのかといえばパーゴラとデッキ脇の木が増えただけ。それだけでご覧の通り、庭に突き出たステージがみんなで過ごしたい外の部屋になりました。
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ビフォー・アフターをひと通りご覧いただきました。いつものことながら、この一瞬にして出現するアフターの世界、楽しいですよね。実際にはビフォーからアフターに至るまでの時間があるわけでして、その間の職人さんのガンバリ、問題発生時に解決方法を考え出したり、スタッフの熱意、お客さまの期待感、いろんなことが折り重なり積み上げられて出来上がったアフターで、それをこんなふうにパッパッと並べる快感、私にはたまんないお楽しみなのです。
今日からは各ゾーンや細部の解説を。まずは門塀のリフォームから。
既存の門塀の笠木を取り除いて、ホールインアンカーで接続してブロックを積み足し、表面をジョリパット(カラーモルタル)で仕上げました。
この門塀だけが目立って浮いた感じにならないためもあって、庭の中にも同じ仕上げの塀を設けてあります。それはまた後日。
既存では低くて使いづらかったインターホンもこれで通常の高さにレイアウトできました。
そしてポストは積水エクステリアのボンボビです。シンプルで機能的で、かつデザイン性が高くて、最近はまってます。特にこの赤いヤツ。
庭も含めて住宅まわりは中間色で構成されているものです。視界の中に原色はほとんど存在しません。そこでこういう赤いポストや庭でいうとターコイズブルーのベンチなんかがポツンとあると、それをアクセントとして景色全体が上がってくる感じになります。
アットホームでウエルカムな仕立てになった門を通って左を見ると庭へのアプローチ。
明日はここから庭に入っていきましょう。
昨日分を今アップします。インターネットの調子が悪くて、書き込みして『保存』は完了したものの『公開』がうまくいかなかったのです。
では庭には行っていきましょう。入り口右側にぬれ縁、
左側が子どもたちのための巨大な砂場と大人のためのベンチがある広場。
その奥右手にもともとあったウッドデッキ、ここにはコーナーパーゴラを付けました。
デッキの外側がガーデニングスペースで、すでに色とりどりの花が咲き乱れています。
ガーデニングスペースを通り抜けると石の階段があって、正面にはお隣りさんとの軽い目隠し兼転落防止の木工フェンス。そして庭の外周を歩く通路へとつながっています。
明日はこの通路を、ウッドデッキから歩いてみましょう。
ビフォーでは植物が生い茂って踏み込もうというイメージも浮かばなかった場所が、じっくりと設計してみると実はけっこう広くて、散策路をつくってその周囲を野菜やハーブを育てる場所として使えるのではと考えました。限られたスペースで盛り沢山な提案を繰り返しているもので、庭を端から端まで楽しみきるという癖が付いているのです。
ウッドデッキの裏側から庭の外周をグルッと歩けるようにレンガで通路をつくり、途中デッキ外のガーデニングゾーンから合流して、アーチをくぐって、終点には木製物置とトレリスがあるという仕立てです。
この小道をお嬢ちゃんたちが気に入って駆け回っているとのこと。うれしい反応でした。
ガーデンリフォームで、特に和風から洋風への仕立て直しでは「庭石をどうするか」ということがあります。一昔前に群馬や栃木の石屋さんがトラックに満載した庭石を売り歩いたなごりで、関東の古い住宅地にはやたらと庭石が使われているのです。
建て替えで庭が狭くなって掘り出された庭石を処分するかどうか考えているような時は必ず「石はいくらあっても邪魔になりませんから、とっといてください」と話します。リフォームも同じで、余った石で花壇やベンチやバーベキュー炉をつくることしばしば。今回も階段と土留めに使いました。
庭の仕立てが和洋どちらであれ、庭をつくるときには自然風景の再現という側面があります。石は地球上のどこに行っても存在する素材ですから、それが庭を壊すということはありません。庭石イコール和風というのもナンセンス、と考えれば、石はこれまで以上に自由自在に使用していいものなのです。
私自身縁側で育ったような子どもだったので、縁側、ぬれ縁には郷愁や思い入れが分厚くあります。『5th ROOM』という概念に魅力を感じるのも縁側が日本的な『5th ROOM』だからでしょう。
今回設置したぬれ縁はタカショーのユニットデッキです。既製の縁台は45センチ幅の物がほとんどで、それでは狭すぎて階段かベンチにしかならなくて。これなら座布団出してお茶が飲めます。
いいですよねえ、縁側でお客さまにお茶を出して、そこに家族が集まってくるという風景。
私の縁側・・・、夏休みの宿題を縁側でやって、昼寝も縁側で、スイカを食べて縁側の外のじいさん自慢の坪庭に種を飛ばしたり、沢ガニやカメを飼っていたのも縁側でした。近所の人は玄関ではなく縁側からやって来たし、大人が七輪出してきて肉や魚を焼いたりもしました。風が心地よくて、チョウチョやセミやトンボが飛び交っていました。つゆ時期には縁側からホタルがユラユラ見えて・・・。こうして思い出すと、縁側の記憶はイコール周囲の愛情にどっぷりとひたっていた時間だった気がします。その時は普通のこととして意識しませんでしたが、そういう時間が実は一生の宝物なんだと、この歳になるとそう思うのです。
菊地さんちのお嬢ちゃんたちの記憶にこの縁側での出来事、縁側がある幸福な日常が蓄積されていく、庭屋冥利につきることです。
縁側って室内と庭を結ぶ場所であると同時に、家族とご近所さんが打ち解け合える場所で、さらに、子どもにとっては不思議な魅力を持った『お気に入り』の場所なんですよね。お嬢ちゃんたちも縁側が大好きとのこと。広々ウッドデッキもいいけど、縁側にはそれとはまた違う世界観があります。
庭の真ん中に大きな砂場をつくりました。ご両親から子どもたちへのプレゼントですね。エクセレント!砂場は異次元空間のように子どもにインスピレーションを与える場所、この砂場があることで子どもたちは確実に厚みのあるおもしろい大人になることでしょう。
そしてその砂遊びを見守れる位置にある、昼寝ができる大きなベンチは大人のための場所です。子どもたちに負けないように、存分にこのベンチを楽しんでいただきたいと思っています。
大人と子どもの空間、大人の目線ではこう見えます。
子どもの目線ではこういう具合です。
低い視点から見ると、どうですか、砂場に飛び込んで行きたくなりますよね。遊ばずにはいられない感じでしょ。
門塀のリフォームで既存の塀にブロック積み足してジョリパットを塗って仕上げました。赤いポストbonbobiのシルエットから派生したまるっこい門構えです。それを設計した時点で「浮いちゃうかな?」という危惧があって、浮いちゃうというのはそこだけが周囲と異質で目立ちすぎるというか、別世界から切り取って持ってきたみたいに見えるのではないかという意味。よく見かけますよねそういう門構え。で、同じ素材、同じ雰囲気の構造物を同一視界に存在させたくて、そんな経緯でベンチの背後の壁を思いついたのです。理屈っぽいんですが、設計するってそういうことなんですよ。
これが門の前から庭を見た時のその壁の見え方です。
内側からはこうです。ベンチに腰掛けても壁の向こうが見通せる高さに設定しました。これはご夫婦がお持ちの「開放的な庭にしたい」というイメージからそうなりました。開放的でありながら、内側にしっかりと『家族の場所』を成立させる効果を生んでいて、当初のこれを設けるきっかけから発展して、庭の重要な構成要素になりました。
(んっ、今日は言葉が堅苦しいですよね。実は寝不足でして・・・自分にむち打つ感じで書いているのです。たまにはこういう日もあります。書いてるうちに回復しますんで、しばらくご辛抱を)
ビフォーで、玄関側から庭に入るところの通るのに邪魔な位置にあった立水栓をなくして、配管し直して壁から蛇口を出しました。
蛇口はみなさんで選んでいただいて、うさぎ。
あぁ、やっと目が覚めてきました。習慣になっている朝のブログタ~イム、こうして完成した庭やそれをよろこんで楽しんでくださっているお客さまの様子をアップすることで、今日の新たな設計に意欲が湧いてきます。ゴールデンウィークの中休み(お店をやっているので休日は仕事モード一色で、平日がややノンビリできるという、世間と逆の感覚になっています)、今日も張り切って、設計に集中です。
昨日ははりきって2回アップしたのに、今日は朝から時間が取れなくて今(PM8:30)になってしまいました。
今日はホームズ新山下店で相談会(時々行ってます)で、何組かのお客さまとお話ししました。それぞれにすてきな暮らしをしている人たちで、中でもニコニコと、昔のチャーミーグリーンのコマーシャルに出てきそうな仲良し老夫婦。ご主人は現役時代にホームズの海側にあった貯木場で働いていたのだそうで、今ではすっかり変わってしまった風景ですが、それでもホームズに来ると懐かしい感じがするから楽しいのだとおっしゃっていました。引退後は何度も娘さんの添乗つきで海外に旅行しているそうで、今まで9か国に行かれたそうです。「どこが一番良かったですか」とお聞きすると、おふたり声を揃えるように「イタリア」だそうです。で、玄関のくぐり戸が壊れてきたので取り替えたいというご相談で、聞いた限りではまだ取り替えなくても大丈夫そうな感じでしたので、「まだしばらく大丈夫だからそんなとこお金かけないで、美味しい物食べるとかまた旅行にでも行った方がいいんじゃないですか、木戸を取り替えても楽しいわけじゃないんですから」と話しました。でもおふたりともニコニコしながら「旅行はもう十分楽しんだから一回我慢して家をちゃんとしとこうと思ってるんです」とのこと。なんかうらやましい限りで、ほんと充実した人生なんだなあと感じました。たぶん70代後半、ご主人は海を見ながら仕事して来た感じで、奥様は笑顔が消えることがない、普通の表情が笑顔という、ふたりともいい顔していました。
庭の相談に来られる方ってみなさんそれぞれにイイ感じに暮らしている人ばかりで、そういう人たちと知り合えることが毎日の楽しみであり、仕事のはげみになることなのです。
では菊地さんちの解説に戻ります。
ウッドデッキの外側がガーデニングゾーン、草花を楽しむ場所です。撮影から2週間経っていますので、今の時期ですから花のボリュームはこの倍くらいになっていることでしょう。花いっぱいのゴールデンウィーク、いいですよねえ。
このエリアは全面的に土壌改良して、その上にウッドチップ(針葉樹の間伐材を砕いたもの)を敷きました。これで雑草取りから解放されるのです。あとはチップをどかしながら好きな花を植え足していけばいい。この調子だと秋にはウッドチップは見えなくなるでしょう。
この便利なウッドチップ、ビッグサムには売っていましたがロイヤルホームセンターには置いてありません。どうしているかというとインターネットで探して取り寄せています。雑草取りの苦労を軽減させてくれる便利グッズ、使ってみようという方はネットで検索してみて下さい。そういうことが面倒な方はグレースランドにお電話頂ければお取り寄せいたします。
ゴールデンウィーク後半は雨のスタートになってしまいましたね。でもまあいいじゃないですか、雨音はショパンの調べ、ゆったりと家族の時間を始めましょう。
もともとあったウッドデッキが、広さも十分で傷みも少なかったので、塗装してそのまま使うことになりました。で、ひと工夫。コーナーパーゴラとマリンライトを付け足して、ご覧の通り、居心地良好で夜も楽しめる特等席になりました。
パーゴラの効果は数日前に『猿の惑星』で解説したとおりです。そして毎度お馴染みのマリンライト。今回、ここを含めて5か所にマリンライトを使っていて、夜になるとthis is Yokohamaって感じです。
この庭には5個のマリンライトが配してあります。
玄関アプローチの門塀の上。
ベンチの背後の壁の中央。
ウッドデッキの外側。
デッキにとり付けたパーゴラ。
庭の奥、外周を巡る通路の入り口。
暗くなると自動的に全てが点灯します。空から見るとほぼ均等な感覚で全体にちりばめる感じになっていて、キャンドルを灯したような情緒のある光が庭空間を柔らかく浮き立たせます。
もう何年も使い続けているこのマリンライト、なかなかこれに勝る照明がなくて、というかこれで大満足なのであまり他のを探してないんですけど。
明日でゴールデンウィーク終了ですね。一生の宝になるような思い出をつくった人、ひたすらの?んびりと充電にあてた人、いろいろでしょうねえ。私はといえばひたすら仕事、たんたんと。田舎から送ってもらった山菜食べながら元気を補給しつつ目の前の物件にひとつづつ集中して、あっという間に連休最終日って感じでした。まっ、充実しているということですかね。
今日は菊地さんちにもともと植えてあった樹木をご紹介します。周囲を整理したことでイキイキとした感じです。
ウメ
ヤマモミジ
キンカン
レンギョウ
以前お住まいだった方が庭を楽しみ、庭木を大切にしていた様子がその樹形や健康な状態からわかります。こうして住む人が変わっても木は残って、住人よりも長生きしていくというのが理想の庭木の姿なんですが、立て替えや相続の切り売りで伐採されてしまう木が多くて・・・、残念ですがしかたのないことですね。庭は住人が主役ですから。
今日と明日は新たに植えた樹木をご覧いただきます。
レモン
エゴノキ
シマトネリコ
レモンとエゴノキとシマトネリコ、それぞれ果樹、落葉樹、常緑樹の一番人気を植えました。この仕事を長くやっていると庭木の流行りすたりも感じていて、それはイコール庭そのものに対する考え方が変わってきたということなのです。眺める庭から過ごす庭、客人やご近所を意識した庭から我が家の家族のための庭、この価値観の変化によって好まれる木も変わってきたというわけです。
この価値観がまた変化して今植えている木が時代遅れになるのかというと、私は予言者ではありませんけど、そうはならないと思っています。日本人が庭を舞台に『家族』を意識しはじめたのが現在で、今後どう展開するかというと、充実した家族同士が交流しはじめる。今年ももうすぐ開催されるオープンガーデンもそうですし、そういうイベントではなくても日常的にお互いの庭を行き来する、そういう交友関係が育っていくでしょう。田舎の縁側みたいにです。そうなったときに今植えた木がコンセプトからずれるかというと、まったくそうではないので、だからこれらの木は時代遅れにはならない。変化があるとすれば、充実した家族同士の交流で際立ってくる個性、独自性といったこと。今の木をベースにしてよりシンボリックで個性的な木、たとえばヤシノキや今現在敬遠されがちなマツ、広い庭ならヒマラヤスギやメタセコイヤなどを植え足していく、そんなふうになっていくんじゃないかと。庭の変化は日本人の変化なのです。ですから豊かで健康で個性的な庭がどんどん増えていったらいいなと思っています。
引き続き新たに植えた樹木です。
電柱を隠すように植えたカイドウ。ちょうど花満開でした。
カイドウ
コニファー3種。
ゴールドライダー
ブルーエンジェル
エレガンテシマ
コニファーは大きく分けてグリーン系とブルー系があって、ブルーエンジェルがブルー系で他の2つがグリーン系です。グリーン系は冬に茶色くなったり沈んだ感じになりますが、春の芽吹きが輝くように鮮やかです。名前にゴールドがつくもの(ゴールドライダーやヨーロッパゴールド)が多いのはそのためと思われます。対してブルー系は一年中青白い感じで庭に独特の雰囲気をかもし出します。
そしてブルーベリー。これも木(灌木)です。長野県小諸の農家では背丈ぐらいに仕立てたブルーベリーを丁寧に手摘みで収穫し、ジャムにして出荷しています。横浜の庭でそこまで育ったものを見たことがないので、きっと何かこつがあるのでしょう。それとも気候の違いなのかな?詳しい方、情報をお願いします。
ブルーベリー
ゴールデンウィークで大量に設計予約をいただきまして、嬉しさとともにプレッシャーを感じています。全てのお客さまに驚きと満足を感じていただける提案をすべく、スタッフ一同全力を注ぎますので。申し込みしてくださったみなさま、一点だけ、いっこづつ丹念に仕上げていきますから、時間がかかることを何とぞご容赦ください。
菊地さんちの草花です。
アイビー(ヘデラバリエガータ)、駐車場脇の花壇を解体した後の植え込みに植えました。ほとんど世話しなくても(水や肥料はやらない方がいいくらいです)1年もすれば密植して、おとなりの大谷石に軽く這い上がる感じになれば、駐車スペースが前庭としての厚みを持つことになります。それを期待。
もともとあった庭石をあちこちに使っている庭なので、石といえば地被性植物。這うタイプのコニファーと多肉植物です。これらが石にまとわりつくように成長すると『ロックガーデン』風の景色が出来上がります。
リフォーム前からあったバラです。庭を整備して植え替えたらイキイキしたと奥様がおっしゃっていました。
環境が整うと生命力が倍増する、人も植物も同じです。庭の相談に来られたイイ感じのファミリーと話しながら、これから私が提案する庭によって、このご家族の未来がさらに大きくプラス方向に振れる、そんなイメージで仕事しているのです。実際に庭を見に行って、そこが暗くジメジメしていて、庭に出る楽しみどころか、雑草取りもおっくうになって、リビングのカーテンを開けない生活になっているというとき(よくあることです)、このままじゃいけない、これじゃご夫婦がどんなにがんばってもなかなか幸せを維持できないだろうなあと感じます。洋服を着たまま必死に泳いでいるような、足におもりを引きずりながら頂上目指して歩いているような、そんな感じに思えるのです。人それぞれですから余計なお世話といえばそうなんですけど、でもうちにご相談に来られたお客さまには、全員幸せに、すばらしい人生をおくっていただきたい。そのお手伝いができる庭を提供できるようにと日々設計しています。・・・なんか大きく構えましたけど、これ本音です。
小雨でしっとりイイ感じの菊地さんちの草花をご覧いただきながら、
昨日打合せにうかがったご夫婦、素敵でした。リビングの壁一面に特注の本棚があって、映画の本とミステリーがズラッと並んでいました。聞くとご主人が映画好きで、年間100本を目標にしていて、実際80本くらいを観ているそうです。もちろん映画館で。奥様もご一緒することが多いそうで、帰りには食事やショッピングだそうです。豊かだなあ・・・、趣味の映画に年間100本という目標設定しているところがすばらしい。
それを聞いた妻カオリが「うちは無理だね、一緒に映画観たら帰り道にはケンカになる。私は感想をああだこうだとしゃべりたいし、あなたは余韻に浸って無口になってしまうから」とのこと。おっしゃる通りです。まっ、なかなかそういう時間もとれないし、わざわざ喧嘩の種を蒔くこともないか。・・・でもうらやましいなあ、一緒に映画に行く夫婦。
ご主人に、今まで見た映画のNO.1は?と聞いてみました。『博士の異常な愛情』だそうです。数十年前の映画とのことでもう映画館ではむりでしょうから、DVDを探してみようと思っています。ちなみに私のNO.1は12歳のときに観た『卒業』です。ダスティン・ホフマンの「エレ~ン!」ですね。
撮影の日がちょうど今朝みたいな小雨で、花がものすごくフレッシュな『シズル感』を出していました。
晴れの日は晴れの日の躍動感みたいなエネルギーを感じ、雨の日は自分の内面に染み込むような情緒のオーラに包まれる。日当たりや土壌が悪くなって環境条件が崩れるといじけてくるし、水をやらないとしおれるしでやっかいではありますが、でもその成長、開花、どん欲な要求を突き付けてくることも含めてこちらに語りかけてくる感じが、庭の草花ってのは多弁な同居人、女房みたいです。年に何度かこちらの意図したように咲いてくれなくて、ぜ~んぶ引っこ抜いてしまいたくなるのも正直なところ、かといってそれが無くなったら、人生の大切な部分を失う気がします。照る日曇る日吹雪の日、日々精進です。
んっ、気が付きました?そう、今朝ちょっこっと夫婦ゲンカをしてしまいまして・・・、連日これだけ優れたご夫婦とお会いしているのに・・・なさけない限りです。照る日曇る日吹雪の日、日々精進です。
ついにブログのクリック総数が7万回を超えました。毎日ご覧いただいている方も多くて、はずかしいやらありがたいやらです。今後もコツコツやりますんで、よろしくお付き合い下さいませ。照る日曇る日吹雪の日、日々精進です。
庭に価値を生む源泉って、庭への情熱という直接庭に向かったパワーではなくて『家族への思い』なんだと、つくづくそう思います。数年前のガ-デニングブームが何であっさりと終わってしまったのか、きっとそのブームを仕掛ける側にその『家族への思い』という視点が欠けていたからだと。見た目に美しいだけのデザインや何故かイングリッシュガーデンのオンパレードで、その庭によって人生を豊にすごす、家族が幸福にすごすというような情報やメッセージがほとんどなかった。「こんな表面的に庭をいじくった、デザイン遊びみたいなブーム早く終わればいいのになあ・・・ったく」私、当時の文章に書いてます。
まあそれも昔の話。今も昔も私は変わらずに、お客さまが家族を思う気持を応援する庭を設計し続けていて、今回長~くご紹介している菊地さんちはその典型なのです。ですから居心地が良くて、ブログも長居をしている次第です。
奥様の家族への思いがちょっとした小物からも感じられます。どうですこれ、イイ感じでしょ。子どもたちにとってはこのウサギとリスは完全に生きていますよ。しょっちゅう会話しているはずです。家族ですね。
そして室内やデッキのテーブルに、庭の花がアレンジしてあって、
こういうことも溢れるほどの『家族への思い』があるからだと思うのです。
その愛情にどっぷりひたってすごすお嬢ちゃんたち。きっとご両親のように愛情豊かな人に育つことでしょう。
大きくなって結婚して、君たちの家族ができたら、おじさんがすばらしい庭つくるからね。声かけてちょ。
菊地さんちのリビング、サッシが大きいのが魅力的です。庭と室内が一体化したような感じで、ウッドデッキとぬれ縁がさらにそういう感じを演出しています。
日常的に屋根の無いところも生活空間になっている。考えたら昔の家ってそうでしたよね。縁側とか土間とか。一年中鍵なんかかけないで(今はそういうわけにはいきませんけど)、どこの家も外と内があいまいで、つまりご近所の何軒か合わせてひとつの生活共同体みたいな。
まあ地域のコミュニケーションは別にしても、我が家の生活エリアに庭が含まれているってのがいいんです。普通のことのようであって、これがなかなかできていない。庭はあらためて外に出る感じの、生活の付帯ゾーンというのが一般的なのです。庭に出るときはある種の決意とか気合いが必要、「さあ雑草抜くか」とか・・・。
庭も我が家、それも室内より家族に人気のある場所、これが理想のファミリーガーデンです。
菊地さんご夫婦にはホント、いい刺激を受けました。で、ついつい長~いご紹介になって。今日が最終日です。
この笑顔、最高ですよ。家族ってイイなあ、庭ってイイなあ、つくづく。菊地さんありがとうございました。
私はあといくつ庭をつくれるだろうか、あと何組のすてきな家族と知り合えるだろうか、時々考えます。仕事は切りがないことですし、やればやるほど、続ければ続けるほど、満足のゴール地点は遠ざかっていきますから、いつ終わりが来ても「もっと仕事したかった」と思うのは明らかです。ですからこれは考えてもせんないこととわかっています。
目の前に積み上がっている設計依頼のひとつひとつからお客さまの顔が浮かびます。その顔すべてを順番に笑顔に、それも最高の笑顔にしていくこと。そのことにファイトを持ってあたれる今の状況に感謝しています。
さっ、明日から新シリーズ、乞うご期待。