庭とリビングが丸見えにならないように、木製パネルと樹木で軽めの目かくしをつくりました。
今日からご紹介するのは長島さんちです。いい感じの若いご夫婦で、新築の庭をどうしたらいいかと相談にいらっしゃいました。現地は建築工事に含まれていたタイルテラスがあるだけの状態です。さあこれをベースにどんな設計をしましょうか。
いろいろとお話をうかがうと、最近ご主人方のご両親を亡くされたばかりだそうで・・・、つらいですよねえ。誰もが乗り越えなければならないハードルなのでしょうが・・・。こればかりは、自身で踏んばるしかない問題ですから、私には何も出来ませんけど、せめて少しでもパワーを出してもらえるようなプランをご覧いただこうと・・・、そんな気持ちで設計したのがこれです。
Plan A
昼寝ができるパーゴラ、食事をするテラス、大勢で火を囲めるバーベキューコーナー、和風のガーデニングスペースという内容です。
幸い気に入っていただけたので、これを元にして打合せを進めていきました。それを一気にご紹介したいところですが、今日はここまで。実はここのところ仕事がかなりハードで、老体に無理は禁物なのでもう寝ます。クタクタなのです。時々思います、疲れない身体とへたらない精神がほしいと。だれか私に“元気が出るプラン”を提案してくれないかなあ。じゃっ、そんなわけですのでまた明日。
さて、寝て起きたら元気いっぱい。不思議なものです。それでは長島さんちの続きを。
昨日ご覧いただいたPlan Aから、予算その他ご検討いただきながら次のPlan B、そして最終のPlan Cへと設計変更していきました。
Plan B
Plan C
設計意図やアイデアの解説は今回は省略して、それよりもこの設計を進めている間、通奏低音のように、私の中に存在し続けたある思いについて書き留めておこうと思います。
唐突ですが、私、ガーデンデザインは家族の暮らし、その幸福感をデザインする仕事だと強く思っています。これはかっこいい言い方をしているわけでも何でもなくて、長い間この仕事をやっているうちに、いつのまにかその思いが強まっていて、今ではそれ以外のことに時間を使いたくないとすら思っていて、信念のようにその思いが強固になっています。
うちのスタッフたちによくこう言います。
「世の中にレンガやまくら木が欲しい人、庭木が欲しい人などいない。それらを使った“家族が幸福な時間を過ごすステージ”が欲しい、それがお客さまのご要望なんだ。お客さまがイメージする、漠然とした“幸せな場所”を具現化する作業、それがグレースランドの仕事。このことから1ミリもぶれることなく工事完成までがんばり通すように」
内輪話しを披露するようで恥ずかしいのですけど、これは何度も何度も、「またいつもの話が始まった」と言われても話し続けていることなのです。なぜ何度も繰り返すのかといえば、私にとって信念となっているこのことが、スタッフたちにとってはまだそうなっていないから。意味は理解できていてもまだ腹の中心にそのことが据わっていないからです。でもこれは、スタッフたちの能力不足を責めているのではありません。繰り返し話さなければ軌道が外れてしまうのは当然のこと。私も42歳の厄年を過ぎたころからようやく実感できたことなのですから。一人前のガーデンデザイナーになるということは、センスや技術や知識はもちろん、このことが信念になるということ。そこを目指して修行中の彼らなのです。だから私は彼らに「またいつもの・・・」と愚痴られても、何度でも繰り返し話すのです。
で、内輪話はこれくらいにして、この設計中にどんな思いがあったのかと言いますと、長島さんご夫婦のベクトルに自分を合わせたいということでした(わかりづらいですよね)。最初にお会いした時点で、ほんとにその一瞬で、ご夫婦からとても強いオーラを感じたのです(さあ始まりました、グレースランド版“オーラの泉”です)。そのオーラは以前の私が発していたそれと同質の、でも今の私には消えている種類のものでした。それは“這い上がろうともがいた末に思いがけず恰好の手がかりを見つけた時”の魂が発する、色でいうと、高い山の頂上で見るご来光が始まる直前の金色が混じった紫色の、とても荘厳で、かつドキドキするような、J.S.バッハの音楽が響いている感じの色合い(これまたすっごくわかりづらいですよね)でした。そう感じて、次の瞬間には「いかん!今の自分にはこのオーラと共鳴できるパワーが無い」とう自責が始まり、その場はひと通りの庭の話をしてお茶を濁しました。その後自身のパワー増強をこころがけながら打合せを進めて設計に。そんなスタートだったので、設計中ずっと“負けないように”という思いが続いていたのでした。
今日のはたぶんよくわからない話でしたね。でも私的にはこの手の話題のスイッチが入ってしまいましたので、今回のシリーズはこんな話を織りまぜながらやってみようと思います。あきれずに、辛抱強くおつき合い下さい。
明日はビフォー・アフターです。
御来光直前のオーラを放つ長島さんご夫婦の庭、ビフォー・アフターです。
Before
After
Before
After
Before
After
昨日の続きです。
まずお客さまと話すことがガーデンデザインのスタートです。たぶん、年間300組以上のご夫婦やご家族と話しています。主に庭の話ではありますが、時にはやや立ち入って子育てや夫婦の話にもなります。植木やレンガの種類についての話よりもそっちの方についつい入り込み過ぎて失礼なことを言ってしまうこともありまして、この場を借りてお詫びいたします。「他人の私が言うべきでないことまで口出ししてしまって、ほんとに申し訳ありませんでした。どうか広い心で、愚かな私をお許しください」てな感じでお詫びが済んだところで、性懲りも無くまた少し、お客様方に失礼に当たるかもしれない話を。
これだけたくさんのご家族にお会いして話していると、他の仕事をしていたら感じたり考えたりしないであろう、いくつかのことがあります。家族や夫婦についてのことです。今回の長島さんご夫妻からあのオーラを感じたのもそういう習慣といいますか癖といいますか、まあ一種の職業病なのかもしれません。で、いろいろと感じてきたそういうことの中で、特に新婚さんと子育て真っ最中の若いご夫婦に(余計なお世話ですが)お伝えしておきたいことがいくつかありますので、・・・おっと、もうこんな時間だ。いよいよ明日開催のオープンガーデン、その準備にとりかかる時間ですので今日はこのへんで。
長島邸のテラスまわりです。意識したのは開放感と隠すことと立体構成です。このことの解説は過去何度かやっていますので今回は省略。
テラスの中央にはイス・テーブルが来る予定なのですが、ご夫婦そろって仕事が忙しいそうで、まだ購入されていません。今はプランターをアレンジしてダイニングからの眺めを楽しんでいらっしゃいます。
で、ハードな仕事から帰ってからカーテンを開けたくなるように、最近お気に入りの船舶ライトを設置しました。暗闇の中で、何とも情緒のある光を放ってくれるライトなのです。
で、昨日の続きです。新婚さんと育児中のご夫婦にお伝えしたいこととは、夫婦は他人だということです。そして、結婚したときから夫婦になるのは戸籍上のことだけで、実は結婚は、これから夫婦になるための訓練を始めるという儀式だということです。
いきなり冷たいような厳しいような言い方で申し訳ありません。でも、この感覚といいますか、こういう認識がないばっかりにぎくしゃくしっぱなしの離婚予備軍を多く見受けます。年季の入ったご夫婦ならこのことは実感しているでしょう。でもそれを教えてくれる人は少なくて・・・、少なくとも学校では教えてくれません。結婚したら夫婦なんじゃなくて、結婚してから徐々に夫婦になっていくのだという“訓練”や“修行”、それが新婚生活なのだという考えに立てば、感情の行き違いや夫婦喧嘩、こんなはずじゃなかったというストレスも成長のための課題としてふたりで解決していけるはずなのです。それが、ついつい話し合うことなく不満を溜め込んでいったり、どちらかがやたらに相手の機嫌を気づかうばかりの生活になってしまったり。そうなると、恋愛期間には想像もできなかったほど笑顔のない、冷めきった関係になってしまいます。そう、笑顔笑顔。大事なのは笑顔なのです。夫婦は他人ですが、まずその当たり前のことをしっかりと認識した上で、その他人同士が人生を共にする“一番長い付き合いの戦友”を目指して一緒に暮らすというのが結婚生活のスタートなのです。
笑顔のないご夫婦にはふたつのパターンがあります。まずは夫婦喧嘩の最中、あるいは上手に喧嘩ができないでお互いにストレスを溜め込んでいるパターン。そしてもうひとつが育児に疲れて、奥さんが神経質になっていて、それをご主人がフォローできていないというパターンです。この時期の苦労は過ぎてしまえば夫婦共通の笑い話ですけど、その渦中にいる当事者には深刻で、それに耐えきれずに離婚してしまう夫婦も急増しているようです。そういえば最近、夫婦で笑ったことがないという人は要注意ですよ。
では新婚さんや育児真っ最中の夫婦はどうすればいいのか庭の話に置き換えてお教えします。・・・おっと、もうこんな時間、もう出かけなければいけません。今日は待ちに待ったオープンガーデン。今日だけは私も仕事を忘れて、瀧本さんと後藤さんの“情熱の庭”、そして素敵な庭好き奥様方との会話を存分に楽しませていただきます。てなわけで、明日に続きます。
長島邸の庭、奥の土の部分はガーデニングスペースになりました。背景にウッドパネル、中央に照明、あとはぐるっと歩けるようにレンガ通路というシンプルな構成です。“やや和風な感じに”というご要望でしたので、モダン和風な坪庭風にまとめました。
ご夫婦共にお仕事が忙しいようで、なかなか庭でしゃがむ時間もないようですけど、数年したら通路以外の場所はすべて草花が茂って、このレンガ通路の円形が意識に入らなくなることでしょう。私が図形を描いておいて、お客さまが庭を楽しんでいるうちにその形が見えなくなる。形が消えて意味だけが残る、そのときが庭の完成なのです。・・・難しいでしょうかこれ。ピンとこなかった方は2、3度読み返してみて下さい。日々設計しながらけっこうこのことを考えているのです。で、それをお客さまに話したり話さなかったりですけど、こんな乗りの長い仕掛けというか願いというか、家族と一緒に成長していくファミリーガーデンの設計は、庭にこの手の思いをいっぱい詰め込んでいく作業なのです。
さあぁてと、話の続きといきましょう。
新婚さんや育児真っ最中の若いご夫婦へのアドバイスです。アドバイスなんて何だかえらそうですけど、私ももう四捨五入で50歳ですから、こういうこと言ってもいいのかなあなんて思っているしだいです。とは言っても私はテレフォン人生相談の加藤諦三でもマドモアゼル愛でもなくただの庭屋なので、庭の話をベースにしてお話ししようと思います。
庭なんて無ければ無いで何ともありません。庭が無くて不幸になった人もいいません。そういうものです。少し乱暴ですけど、夫婦もそうです。結婚なんてしなけりゃしないで何ともありません。結婚イコール幸福などという単純なものでないことは、結婚生活が長ければ長いほど身にしみることです。事実、けっこう仲がいい方だと思っている我が家であっても、私のストレスの大半は妻が原因なのです。我々の目標はジョンとヨーコ、そんな高い理想(妄想かな)を掲げているだけに、いったん喧嘩を始めると強烈です。お互いに譲らずに論争(途中からは小学生レベルのののしりあいですね)が続いて、ふたりともフラフラになって倒れる寸前まで消耗します。白状すれば「こんなやつ早く死んでくれないかなあ」と今までに3回思いました。多分ヤツも同じようなもんでしょう。そんなとき思います。あぁいやだいやだ、こいつと結婚しなかったらこんな思いしなくてすんだのに。でも内心、そうじゃないことも知っています。たぶん誰を連れ合いにしても同じことなのです。うちの親も妻の親も、よその夫婦もみんな同じで、何度かはそういううんざりするような夫婦喧嘩を経験しているようですし。つまり、やっぱりそうなんですよ。“結婚イコール幸福”では絶対にないのです。
話を庭に戻しますが、無くても何ともない庭をどうしてみなさん欲しがるのか、何で自動車を買うほどのお金を賭けてウッドデッキやテラスを仕立てるのか、答えはシンプル、幸せになりたいからです。でも庭をつくればイコール幸せになれるというものではありません。デザインして工事を完成させるまでは我々グレースランドにお任せいただければ問題なしですけど、肝心なのはその後です。土づくりを心掛け、花がらを摘み、肥料や消毒も必要です。種や苗を買ってきて育てなければ花も咲かないし、収穫もできません。ウッドデッキはペンキ塗り、屋外炉は炭をおこして、実際にバーベキューしなければ何にも楽しくありません。芝生の庭はもっと大変で、夏は毎週芝刈り、そして雑草取りは一年中です。みなさんこういう手間仕事を平気でこなしたうえで、笑顔で庭のある生活を楽しんでいるのです。花が咲いて、人が集って、四季折々その楽しさを満喫しているから、メンテナンスも笑顔でこなせるということなんだと思います。これなんですよ、言いたかったこと。子育ての楽しさや感動よりも義務感や責任感だけで育児をしていませんか? ただ義務感だけで毎日花がら摘みをやっていたら苦痛になってしまいます。手入れもせずに雑草だらけになった夫婦関係を嘆いていませんか? まずは雑草を抜くこと、いや、雑草を抜いてもすぐにまた生えてきますから、それよりももう一歩進んで、どんな庭にしたら楽しいのかをイメージしてみましょう。どういう庭が欲しいのか、どんな夫婦になりたいのか、そいうことです。CKBの横山剣さんも言っています「世の中おもしろくないことだらけだけど、文句ばっかり言ってないで、心にエフェクトかけて自分でおもしろくしてみようよ」
てなわけで、明日もこの路線でいきます。
亡くなられたお父様がコレクションしていた壷を庭に置きました。
そして、二階の仏間から見た庭がこれです。ご主人お気に入りの眺めだそうです。ここからの風景を意識して、仕立てを“和風に”というご要望だったわけです。
永六輔さんの言葉、「人は二度死にます。一度目は生物的な死で、二度目は今生きている人の記憶からあなたが消え去ったときです」
私は四十二歳の厄年を過ぎた頃から、やたらと亡くなった人たちのことを思い出すようになりました。日に何度も、思考の中にその人たちが登場してきて、励ましてくれたり、「それでいいんだよ」と応援してくれたり、何でもないような世間話をしていったり。5年前に他界した祖父母や、小さい頃から私をかわいがってくれた近所のおじいちゃんとおばあちゃん。昔一緒に汗を流した職人さんたち(農家のおじいちゃんが多かったので、何人かはすでに他界しています)。母方の祖父母も時々出てきてくれて、けっこうにぎやかです。そしてみなさん、一様にこう言います。
「生きてるうちにがんばりなさい。生きてるうちに楽しみなさい。生きてるうちに他人様の役に立って、その姿を子どもたちに見せなさい。それが娑婆の務めだよ」
祈りは今日を生きる決意なのです。・・・いやぁ何だか今日はにわか坊主の寅さんが説法しているみたいな感じになってしましました。とにかく、生きてるもんががんばりましょう。亡くなった人たちをたくさん思い出しながら、その方々にたくさんの決意表明をしながら。
で、若いご夫婦への庭ばなしに移ります。
新米夫婦がゆえの喧嘩や育児の大変さのほかに、もうひとつ、くれぐれも注意すべき局面が“新築”です。家を建てるなんて、夢のように楽しくエキサイティングな家族のイベントだと思っていませんか。本来そうあるべきなんですけど現実はそうじゃないことの方が多いようです。
最初、住宅展示場を歩いているときは夢のかたまりです。でも話が進んで契約、地鎮祭、建築工事、コーディネーターとの打ち合わせ、引っ越しの段取り、立て替えの場合は仮住まいの契約も必要です。どんどん夢はしぼんで、その分疲労とストレスが膨らんでくるものです。ストレス指数で考えても“多額の借金をする” 、“生活環境が変わる”、“責任を伴う判断を迫られる”などの項目がいっぺんに起こるわけで、トータルで考えたらその数値は精神的な健康を害するのに十分なものなのです。仕事柄、一年中新築で疲れ果てている奥様に出会います。顔色が悪くて笑顔が無くて、たいがいそういうときは夫婦喧嘩も併発しているので、さらにそこに育児のストレスが加われば、もうこの世の終わりのような最悪な状態です。そんなケースが何度もありました。
そして、新築ですから庭や外構の話になるのですが、うちに来られたお客さまは大丈夫。新築でしぼんでいった夢を復活させるようなデザイン作業ですので、庭が完成する頃には別人のように明るい笑顔の奥様に戻っています。たいがいはそうなっていただけるし、それがこちらのひとつの楽しみでもあるのです。でもあまりに疲れが激しそうな場合は、「外構なんて表札とポストとインターホンがあればいいんです。そんなの仮設で作って、アプローチや駐車場は砂利を敷いておけばいいじゃないですか。庭なんて後でいいですよ。庭が手つかずでも生活に何の支障もありません。引っ越しの段ボールが全部片付いて、しばらく生活してみてからイメージしましょうよ」とお話しして、設計を先延ばしにします。まずはのんびりと心身を休めて、疲労もストレスもゼロにすることです。
ここまででお気付きでしょうか、新築で疲れ果てるのはほぼ100%奥様の方です。それも専業主婦の奥様が断然多い。共働きの場合はお互いに気遣っていたり、忙しくてあまり家のことにのめり込めないのが幸いしているのでしょうか。専業主婦の場合はどうしても奥様が担当みたいな感じになってしまって、ご主人は夢を語り、奥様は現実と戦う、そうなってしまうようです。
これから家を建てようと考えているご夫婦に。ご主人は、奥様だけに負担がいかないよう気をつけて下さい。奥様はできるだけ楽に、コーディネートや引っ越しは全部プロにおまかせみたいな感じで。何よりも、新居での生活がスタートするその日まで夢がしぼまないように、ますます夢が膨らんでいくような、そんな新築を実現して下さい。そして、外構と庭は・・・、ご来店お待ちしております。
夜明け、御来光直前のオーラを放つ長島さんご夫妻。その庭で春の陽を浴びていた木と草花を。
最初は斑入りのカエデです。これはここに来る前に暮らしていたマンションから持ってきた思い出の木だそうです。
続いて、私がおすすめしてプランに入れたレモンと夏みかんです。ここ横浜港南地区は柑橘類がとても良く育ちます。庭のレモンは最高の味、その美味さときたらスーパーで買うのとは違う食べ物のようです。そして夏みかんは、毎年マーマレードづくりを楽しめます。
草花はどれもコンディションが良くて、冬の花がまだイキイキと咲いています。
それでは新婚さん向け庭ばなしに入ります。
今日は花の数と家庭の幸福度は比例する、恐ろしいほど必ず比例する、というこについてです。
これは長年庭屋をやってきて、数限りない庭と家族を見てきた結論なのです。ガーデニングも家族も手間がかかるもの。そして方向性というか目標というか、こうなりたいというイメージが不可欠です。このイマジネーションに向かって手間を惜しまずに、そうやって庭に費やされた時間の分だけ花が咲くのです。そしてこれが不思議なんですけど、幸福に向かって積極的に、具体的な努力を続け、さらに高い幸せを追い求めるというタイプの人はなぜか花を増やします。切り花だったりアートフラワーだったりいろいろですけど、最も多いのがガーデニング。
ガーデニング好きの奥様というとおっとりとした印象をお持ちの方もいらっしゃると思いますけど違います。キッパリと言い切っちゃいますが、ガーデニング好きの奥様は“強い”のです。その強さは頑固とか自己主張が強いとかそういう強さではなくて、しなやかでタフな、柔らかいけど切れない真綿のような、そういう強さです。それと根源的なパワー、エネルギー値が高い。オープンガーデンでよく紹介させていただいている瀧本さんと後藤さん、両方の奥様がまさにそういう方です。と言いますか、やや過剰なほどのハイパワーで、そのパワフルなガーデニングっぷりが感動的な庭を生んでいるのです。
花の数と幸福が比例するなら、逆説的に考えれば花を増やせば幸せになれるということになります。新婚当初は食卓に花が生けられていたりします。休日には2人でホームセンターに行ってハーブを買ってベランダで育てたりもします。それがいつの間にか・・・。
必要なのは幸せな夫婦関係、幸福な家庭生活をしっかりとイメージすることです。できるだけはっきりした言葉で、鮮明なシーンとして。それができれば大丈夫です。いつも言ってることですけど「イメージできれば出来たも同然」なのです。あとはそこに向かって行くパワー、エネルギーがあなたにどれだけあるか、この部分が人それぞれで違うところで、このエネルギー値が高いか低いか、それがイコール幸福を組み立てる能力なのだと思います。
もし自己診断して、自分にエネルギーが不足していると感じる人はどうしたらいいのかいうと、悲観することはありません。そこがガーデニングの不思議な魅力。最初はまったく気張らずに、気楽な感じで始めたガーデニングが、いつしか庭や草花のとりこになっていたということがよくあります。庭と植物は人を育てるのです。そしてエネルギーをチャージしてくれます。ホントです。何となく始めても、徐々に庭で過ごす時間が増えていって、気が付けば薔薇名人になっていたり、農家顔負けの有機野菜を収穫する自給自足な生活になっていたりします。うちのお客さま見ているとだいたいがそういう展開です。そしてそこまでいけばあなたは“幸福達人”、高いエネルギー値で家庭の幸せを守り育てる奥様になっていることでしょう。
そんなわけで、新婚さんはとにかく花を植えて育てましょう。花の数と家庭の幸福度は比例する。花花花、花だらけの生活があなたを強いガーデニング奥様に育て、幸福な家庭を育てるのです。
ところで、こんなこと書いている私の家はどうかと言えば・・・、まあ、紺屋の白袴・・・といったところです。
若いご夫婦へのお話、今日は鉢植えの植物、草花や観葉植物を上手に育てるコツをお教えしましょう。
日当たりや温度についてはそれぞれその植物に合った管理が必要です。コツというのは水やりです。新婚さんが鉢植えを買ってくると、幸せいっぱい夢いっぱいで、はりきって毎日水をやってしまいがちですが、実はこれがいけない。来る日も来る日もいつも適度な水分が与えられていると、植物にとっては甘やかされている状態で、根をのばす必要がなくなってしまいます。根が伸びなければ地上の部分も伸びません。これはほとんどの草花、樹木に共通することです。植物を元気にするには根っこを元気にしなければならないのです。
水やりは鉢の表面の土が完全に乾いてから、やる時は鉢底から流れ出るまで十分に、これがコツなのです。今の季節なら観葉植物なら週に1回、花鉢なら3日に1回くらいでしょうか。もちろん夏には回数が増えて、たとえば日当たり風通しのいいベランダの花鉢なら朝夕2回の水やりを怠ると一気に枯れてしまうこともあるのでご注意ください。もっとも、毎日植物に意識がいくような生活をしていれば、葉っぱの様子で水やりのタイミングがわかるようになるので、植物と相談しながら、という感じになっていくでしょう。
かわいがり過ぎて、あるいは張りきり過ぎて毎日水をやっていると、甘やかされた植物は根をのばさないでイメージ通りに成長してくれない。適度な飢餓状態とたっぷりの水やりを繰り返すことが丈夫で立派な鉢植えを育てるコツ、ということです。
これって子育てや夫婦のいい関係といいますか距離感、間合いの取り方と同じですよね。それから、子育てだけでなく夫育てにも使えます。ソクラテスの言葉です。「妻が良妻なら幸せになれる。妻が悪妻なら哲学者になれる」ご主人をいつも幸せな気分にだけしていたら、哲学者にさせることはできません。まあ、何も哲学者になることはありませんけど、あまりせっせと水やりをしていると根腐れする恐れはありますのでご注意を。
で、私の文章は時々哲学的なのです。
長島邸の最終日。玄関先にヤマボウシを植え、タカショーの木製物置を置きました。
そして、玄関アプローチにも花がいっぱいです。
ご夫婦ともに仕事で多忙な毎日なのに、庭、玄関とも見事に花を咲かせています。そしてこの花数の多さ。ご主人奥様ともに花好きではありますが、ガーデニングが趣味ということではないようです。そうすると、この花の多さ、イキイキと咲く様子は、お二人が自分たちの生活を組み立てていこうとする意志と言いますか、その手の能力の高さを映し出しているのだと、そんなふうに感じ、ついつい自堕落な時間を過ごしてしまう私とうちの家族、我が生活を反省させられました。
うちにいらっしゃるお客さま方は、必ず私よりも“家庭力”が強い。いつもその良質な磁場に引き寄せられるうれしさを感じています。ほんと、ありがたいことです。
何となく始まって今回シリーズになった『新婚さんへのアドバイス』も今日でひと区切りにします。最後はやっぱりこれ、笑顔の重要性についてです。
疲れたりストレスがたまってくると、まず笑顔が消えるものです。それが夫婦の、家族のコンディションを量るバロメーターだと意識して生活してみて下さい。笑顔が消えていることに気付かないまま修復不可能な事態に陥ってしまわないように、笑顔に敏感な日々を送っていただきたい。そういう、自分や家族の笑顔を意識する生活が習慣づいたら、次にもうひとつステップアップして、笑顔を絶やさない、笑顔を武器にする、笑うことを生活を豊かにする手段として活用する、そこまでイメージしていただきたいのです。
エスキモーのことをスマイルピープルと言うそうです。基本的にいつも笑顔。氷点下の過酷な自然の中で生きていくための知恵として身に付いたことのようです。それから、フラダンス。単語が少なくて文字も無かったポリネシアの人たちが、伝説や教えを語り継ぐ手段として広がったというフラダンス。そのフラの基本は笑顔だそうです。ハワイでフラダンスを教えてくれたお嬢さんが、何があっても笑顔を絶やさないことというのを最初に言っていました。極寒の地と南の島で、生活の中で笑顔が大切なことだと考えられているのに、日本の文化にはあまり笑顔を大切だと考える教えや風習はないようで、まあそれだけ生存しやすい気候ということなのでしょうか。ちなみに我が家は・・・、もちろん笑顔です。私はスマイルピープル、時々妻から氷点下の風が吹き付ける過酷な環境を生き抜く知恵なのです。
庭屋をやっているとたくさんの幸せな人、たくさんの笑顔に出会えます。設計の中心には“笑顔が生まれる庭”ということを置いています。もしあなたに笑顔が不足していたら、フラッと遊びにきて下さい。庭のことを話したり、仮想庭にイメージを遊ばせているうちにきっとあなた本来の笑顔を取り戻すことができると思います。
新婚さん、育児真っ最中のご夫婦、大変だと思いますけど、大変な時期だからこそ笑顔を意識して下さい。笑顔、笑顔、笑顔、笑ってりゃ何とかなりますよ。