夜になると自動的にマリンライトが点灯して家族を迎えてくれます。おかえりなさい!
おなじみのマリンライトが湘南チックな庭と夜を演出しています。夜の庭はスイッチをゼロに戻してくれる場所です。
では、今日から新シリーズです。
今回はしょっぱなに完成後の夜景をご覧いただきます。出来たてで、まだ何も草花が植わっていない冬の庭。撮影しながら「春になったら・・・」「来年の今頃はきっと・・・」という期待感というかワクワクする気持ちで、ひとりニンマリしながらシャッターを切っていました。ニンマリにはもうひとつ理由があって、撮影中に奥様からうれしいニュースが。庭完成と同時にご懐妊されたそうです。多いんですよこのパターン。うちの庭にそういう効果があるわけではなくて、そういう時期のお客様が多いということなんですけど、とにかくおめでたの方がたくさんいらっしゃいます。奥様にも話したんですが、過ぎてみるとその時期の夫婦、家族の輝きというのは一生の宝になるほど眩く美しい。大切に、そして思いっきり楽しんで過ごしていただきたいなあと思います。
新築で何もない状態の庭スペースに、どういうプロセスでこの庭が出現したのか、いつものように解説していきましょう。
まず最初に2プランをご覧いただきました。お客様がお持ちの庭イメージと「もしここが私の家なら」というイメージをミックスして出来あがったものです。
ご要望は、リビング前の目かくし、これはリビングの居心地を良くするためです。庭で大勢が集う、ご主人の趣味の仲間が集まれるようにしたい、草花を楽しみたいというのが奥様のご希望。そして子どもが遊べる庭。打ち合わせ段階ですでにご懐妊を予感させるイマジネーションをお持ちだったということになりますね。「イメージできたらできたも同然」、これほんと。
Plan A
Plan B
このプランAとBをご夫婦でじっくり検討していただいて、出来上がったPlan Cを明日ご覧いただきます。
Plan C
昨日ご覧いただいたPlan Bをベースにして、ウッドデッキを縁側に変更しました。Plan Bでは集う場所、過ごす場所が2ヶ所でしたから、そのうち1ヶ所を縮小することでガーデニングスペースを増やしたというわけです。ウッドデッキがなくなった代わりに、植物の量が増えて、それがリビングから見えて、さらに縁側という、デッキとはまた違う楽しい要素が増えました。
明日はビフォー・アフターです。
ではビフォー・アフターを。施工期間の3週間を一気にワープで飛び越えるコレ。飛び越えたその間のスタッフ、職人さんのこだわりやがんばりが分かっているので、何度やってもやめられない楽しさとともに、「よくやってくれた」という感慨があります。
Before 1
After 1
Before 2
After 2
Before 3
After 3
Before 4
After 4
Before 5
After 5
こちらの住宅地は少ない棟数が世の喧噪から隠れるようにあって、周囲には森や畑、空も広くて静かな場所です。ですから目かくしは最小限に、地域の心地よい空気感と良好なコミュニケーションも含めた設計になっています。
近くにコンビニはありませんけど、それでもこういう場所で暮らすのは素敵です。この環境では、例えば激しい夫婦喧嘩やイライラして子どもを叱りつけるなんてことも違和感が生じますから、ほどほどのところで丸く収まるんじゃないかなあ。家族がいい感じで成長していくのに適している場所と、どうがんばってもギクシャクしてしまう場所と、『場所柄』ってあるんですよね。この仕事をしてるとつくづくと感じることです。
北原照久さん曰く「住まいは人をつくるところです」、まったくその通り。住まいと地域や環境が与える家族への影響は大きいのです。
全景をご覧いただきながら、全体構成で考えたことをあれこれ。
縁側のあるガーデニングエリアとバーベキューコーナーというふたつのゾーニングになっています。
バーベキューコーナー(集う場所)をリビングから離れた場所に設定するのを、普段は躊躇します。というのは日常の導線から外れると、なかなかそこに行かなくなってしまうからです。ほんの数歩であっても、あるいは2、3段の階段であっても、そこに行くのに無意識レベルの軽い決意が必要だと、いつのまにやら遠い場所と認識してしまうもの。でも今回はいくつかの理由があってそうはしませんでした。まずは奥に行くほどわずかですが幅が広くて(庭が台形)、ぎりぎりバーベキュー炉を輪になって囲めるスペースを確保できるということ。それから背後に高いブロックがあって、その味気無ささえ消せれば、かえってこもった感じの落ち着いた場所をつくれると思ったこと。そしてご夫婦ともにお友だちを呼んでバーベキューを楽しむということをとても具体的にイメージしていらしたということ。コレが一番大きい理由。やる気満々なら、この離れた場所は、『行きづらい場所』から『特別な離れ』というふうに捉え方が変わるというふうに判断しました。たぶん正解だったと思います。
集う場所を『特別な離れ』にして、「ウッドデッキよりも、木や草花と親しみながらの自然を感じる暮らし方を」という選択でできあがったこの構成。
庭のゾーニングをどうするかを考えながら、実は薮田家の『庭のある暮らし』のシーンや家族のストーリーを考える作業だったわけです。最初は理屈と言葉で、次は具体的なシーンに仕立てていく。これからつくろうとする仮想庭で繰り広げられる感動ドキュメンタリー映画、ホームドラマ。それを膨らませる『妄想タイム』に欠かせないのが紙と鉛筆です。文字でも線でも何でもいいので脳内を紙に描き写す。そうやって曖昧なままのイマジネーションを記録することで、安心してさらなる妄想を思い描くことができます。やがて無秩序に殴り書きした紙の上で、当初は想像もしていなかったような庭が浮かび上がってくる、こういうプロセスを経て出来あがった庭は、必ず家族にとっての大切な場所になるのです。
つまり庭は、木や石やレンガを使って、どのような配置で、どういう空間構成をするかということ以上に、その場所を舞台にして展開されるであろう、あるいはそうなったら楽しいだろうなあというシーンやストーリーをどれだけイメージできるかによって、その庭の価値、魅力が何倍にも膨らむ可能性があるということ。逆に言うと、楽しいシーンが保障されている場所なら、雑草混じりの芝生だけの庭でも、砂利敷の広場でも、そこは最高の庭なのです。庭の価値はそこで楽しんだ量、楽しんだもの勝ち。世の中には数百万円かけて楽しさゼロという庭もたくさん存在しますし、労力は自分持ち、材料はリサイクルで、植物は生長を待つという方法でまったくコストを掛けないで出来上がっているのに、そこでは笑顔と歓声が絶えないという、そんな庭も存在します。
いろいろなタイプの庭がありますけど、庭の価値を『家族が楽しんだ量』であるとするならば、その庭をつくるにあたってまず考えるべきことは、家族が楽しんでいるシーンをイメージすること。そのイマジネーションを先行させなければ、その場所もコストも、そして家族の時間も無駄になってしまうかもしれません。イメージすること、家族の幸福なシーンをできるだけ具体的に脳内と紙と鉛筆で思い描くこと、それが価値ある庭をつくるコツです。「イメージできたらできたも同然」なのです。
リビング前のガーデニングエリア、構成を解説します。
まず通路。庭全体の植物を管理できるようにイメージしながら自然石の乱張りでつくりました。乱形は方形の石と違って方向性が自由なので、こういう場合に重宝します。通路がいくつかに分れているのは見た目を楽しくするデザイン的なこともあるのですが、狙いとしては足下を注意しながら歩いてもらうため。庭ですから地面の小さな花にも意識を持ってもらいたいですし、急いで歩く場所でもないので、まあわざと不便に、意地悪しているデザインということです。
このエリアの中心は濡れ縁。普通の縁側はもっと狭くて踏み台みたいな感じですけど、これなら畳一帖分の広さがありますから、座ったり寝転がったりできます。子どもたちは秘密基地やままごと遊びの場所として、あっという間にオモチャだらけにしてくれることでしょう。このブログにも何度か書きましたが、子どもの頃の、縁側を舞台とした思い出が山のようにある私ですから、この縁側、ときめきます。
バーベキューコーナーに向う階段付きです。
縁側の正面には目の粗い縦横格子の木製パネル。ここにはつる性の植物をからめてもらいます。クレマチス、トケイソウ、ゴーヤ、ツルバラ、アサガオ、何でもOK! 植物が絡むことでリビングからの風景と目かくしというふたつの目的が果たされます。
道路側の角にレンガの立水栓。水場を庭の端に配置することで、自然とここまで歩いて来ますから、庭を隅々まで使うことになるという効果があります。それと立水栓の頭にマリンライトがついていて、ご主人の「クルマで帰ってきた時に、灯台のように我が家の明かりが見えるのがいい」というひらめきのご意見があってここにしました。
木製パネルにもマリンライト。これらの照明で浮かび上がる樹木と草花、夜はカーテンを開けっ放しで過ごしたくなる、というイメージです。
楽々と大人6人で火を囲めるバーベキューコーナーです。
座った時に奥のコンクリートブロックが気にならないようにジョリパット仕上げの塀をまわして、さらにその背後にリゾート感の演出もかねてドラセナ(センネンボク)を植えました。
バーベキュー炉はいつものようにヤキスギレンガの円形ダブル積み仕立て。何度もつくっているので職人さんが腕を上げて、きれいな円形が出るようになりました。最初の頃は苦労したんですよ、丸くならなくて。
お隣側と道路側にも必要最小限の目かくし効果を。
ご主人の趣味がバイクと登山で、そのお仲間たちがこの庭の完成を待ちかねていたとのこと。ここで繰り広げられるワイワイと気の置けないバーベキューパーティーが目に浮かびます。もちろんお友だち抜きで、ご夫婦で炭火を眺めるひと時も何よりです。毎日とはいかなくても、月に何度かでもそういう時間が持てたら・・・、うらやましい限りです。
冬のバーベキューもいいもんですけど、でもやっぱり春から秋。早くあったかくならないかなあ。
「藪田さん、人数に余裕がある時にはぜひ声をかけてください。コストコのおいしいリブロース持参でうかがいます」
などと言いながら、お客様の庭で遊び回っている我が夫婦なのです。また1ヶ所、ロコハマ・バーベキューの会場が完成しました。いつか、ぜひ。
今日は庭木をご覧いただきます。構成上必要な位置に趣きの違う木を4本植えました。
ブルー系コニファーの代表格、ブルーエンジェル。よく出回っている同属のブルーへブンよりもスリムなまま成長するため、刈り込みの必要がありません。この位置に植えた理由は、道路側の通路から庭に入ってきた時に感じる庭の第一印象に奥行き感を出すためと、バーベキューコーナーに座った時に、道路の向こうにある窓からの視線を軽く遮るため。
レモンです。事の起こりは確か8年前、テレビでドクターコパさんが「西に黄色は金運がアップします」と言ったことから始まります。西側に黄色すなわちレモンを植えたいというお話がいくつもありました。ところがその頃レモンはまだ庭木としてポピュラーではなかったために、鉢植えの苗木はあるけど庭に植えるほどに成長したレモンはどこを探しても手に入らなくて、「まったく。風水的にどうなのか知らないけど、そもそも果樹を西に植えるってのが変じゃないか」(西日だけでは実付きは期待できません)」などと文句を言っていたものです。でもそのことがきっかけで、レモンが横浜でも育つんだということを知り、その後自家栽培のレモンの味がスーパーのものとは別格に美味いことに気がついて、数年後には庭木レモンの生産も追いつき、今では簡単に手に入るようになりました。レモンが普通の庭木になったことで日本の庭がひとつ楽しくなった気がしています。
撮影中に奥様がこの木のレモンを入れた紅茶を入れてくださいました。厚めに切ったレモンが浮かんだあったかい紅茶、美味しかったです。
エゴノキの解説はついこないだやったばかりなので省略。
リビングの外にこういった落葉樹を植えることの効用は大きくて、というのは、最近の建物は高機密高断熱仕様なので、たとえ屋外が嵐でも室内ではほとんどそれを感じません。ですからいつも家族が集まるリビングから見える位置に植えるのです。落葉樹ですから四季折々の季節感はもちろん、風が吹けば枝葉が揺れて、雨が降れば葉がぬれる。花の時期はハチが来て、実がつけば鳥がやって来ます。それが見える日常。たった1本の木でリビングの雰囲気、生活の感じが大きく快適方向に変わるこの効果を今まで何度も実感してきました。
ドラセナ(センネンボク) リゾート感の演出にはもってこいの木です。ほんとはヤシの木を植えたいところなんですけど、ヤシはスペース(根っこがやたらと大きい)、植え込み作業(クレーンが必要)、価格(50万円以上)などを考えると現実的ではないのであっさりと妥協して、で、これ!
今のところこの4本ですが、場所を考えながらあと2~3本は植えることができそうなので、ご家族にいいことがあるたびに記念樹として増やしていったらいいと思います。庭に家族の記念樹、いいですよね。
照明はいつものマリンライトとLEDライトです。
まずはガーデニングエリア。マリンライトを立水栓の上に1灯と、
木製パネルの柱に1灯。
バーベキューコーナーは、壁の上、円のセンターに合わせてマリンライトを1灯と、
床のタイルに左右対称にブルーのLEDライトを2灯です。
このLEDライト、私はもちろん気に入って使っていますが、それ以上にお客様からのリクエストが多くて、特にブルーが人気です。ブルーライトヨコハマってありますけど、青い光というのは独特の異空間的なムードを出してくれます。幻想的な光ですよね。その幻想的な感じを恋の歌にするとブルーライトヨコハマになるし、庭に使うと非日常的な、リゾートホテルの庭みたいになります。
明日は藪田さんちの最終日。夜景をご覧いただきます。
藪田さんちの最終日です。「藪田さん、ありがとうございました。今は寒いので、春から思いっきりガーデニングとバーベキューを楽しんでくださいね。そうそう、庭よりももっと大きい楽しみが待ってるんでしたね。いやあ、楽しみいっぱいですね」
こちらのご主人はどこか飄々とした感じで「我が道を行く」タイプ。穏やかな表情でいてとてつもなくパワフルな面も持ち合わせた方で、仕事と趣味で超充実した日々を送っていらっしゃいます。出身地をうかがったら京都だそうで、「なるほど」と思いました。とっても京都の人らしい。以前庭をやらせていただいた京都出身の学者さんがいらっしゃいましたが、やはり同じ感じで、穏やかな表情で、仕事も趣味も徹底的に没頭する方でした。私は新潟出身なので、そういう暮らし方ができることがうらやましいのです。まず新潟には趣味人がいません、これほんとなんですよ。思い当たらないでしょ、新潟出身の趣味人。あの豪雪で農耕文化で自民党ですから、趣味は道楽扱いです。趣味人ではなくてろくでなしの道楽者という評価になってしまいます。趣味がない分、仕事はやりますよ。起きてから寝るまでずっと仕事。ただし、工夫するとか新しいことに挑戦するとかいうことが極端に苦手で、先祖代々守ってきた土地をひいじいさんと同じやり方で耕している、そういう仕事のスタイルです。
出身地によって、生活の組み立て方や生活の価値観が大きく違うことのおもしろさってありますよね。うちの妻は兵庫県の姫路なので、言葉の違いはもちろんですけど、最初の頃は彼女の関西風の生活感覚に、ずいぶん戸惑ったり驚いたりしました。正直に白状すればいまだになじめない部分もありますけど、まあ外国人と暮らしていると思えばそれもまた楽しいことではあります。もし新潟の女性と暮らしていたら・・・、意見の衝突、見解の相違はないでしょうけど、会話の少ない退屈な日々になっていたでしょう。
で、京都出身のご主人に対しまして、奥様(微笑みが絶えないかわいらしい方です)の出身地は名古屋。「名古屋ですかぁ、微妙なんですよねえ」と言うと、ご主人も「そう、微妙なんですよねえ名古屋は」。奥様はちょっとふくれていましたけど、ご自分でも「微妙なんですよねえ」と。ひとしきり名古屋の微妙話で盛り上がりました。
要するに関東でも関西でもないんですよねきっと、名古屋って。でもまあ考えたらベストマッチングのご夫婦です(実際、チッチとサリーみたいなお2人です)。京都のご主人と名古屋の奥様が横浜で暮らす。関西と関東の橋渡し、調整役を中間の名古屋出身の奥様が果たしているのではないでしょうか。もし仮に、お2人とも京都出身だったとしたら、関東で暮らすのはけっこう大変な面もあったのではないかと思います。そういえば両方が京都出身というご夫婦には出会ってないなあ。
これまで様々な組み合わせのご夫婦と知り合いました。うちと同じ新潟と兵庫、北海道と神奈川、同じ神奈川県ですけど横須賀と横浜・・・、それぞれに独特のミックス感が漂っていました。狭い日本ですけど、ほんと、場所場所で言葉も文化も違っていて、いろんな組み合わせの夫婦が生まれて、おもしろいですよね。うちの子どもたちはどこの人と結婚するのかなあ、秋田か、沖縄か、ハワイの人ってのもいいなあ。楽しみです。
楽しみといえば、藪田さんちの赤ちゃん。男の子か女の子か、いずれにしてもこの庭で育ったら、確実におもしろい子になりますよ~。またひとつ、先々覗きにいくのが楽しみな庭が出来上がりました。
老後の楽しみ、妻と2人でお客さんちの庭を覗いてまわること。その日のために、全てのお客様が、庭のある暮らしを満喫しながら幸せに暮らしていくことを念じつつ仕事しています。毎日毎日、念じながら。そして次々楽しみが増えていく、ありがたい仕事です。